ウェスタンガール さんの感想・評価
4.7
物語 : 4.5
作画 : 5.0
声優 : 4.5
音楽 : 5.0
キャラ : 4.5
状態:観終わった
原罪と救済
これは、ここ暫く感じたことの無かった、静かで、しかも心の底から呼び起される感動を与えてくれた作品である。
灰羽はその姿こそ天使のそれではあるが、極めて人間的である。
その意味では、灰羽という姿に仮託して語られる寓話であるとも言えなくもない。
とは言え、描かれている彼らの生活、そこで使われている道具、住居、取り巻く街の描写は自然だ。培われてきた伝統、風習が加味され、彼等が重ねてきた営みが感じられる。
差し込む光は弱く、抑えられた色調で描かれた日々の営みが淡々と描かれてゆく。
この為、何時の間にか、そして違和感なく灰羽達に寄り添うことが出来るのである。
灰羽たちは何故ここに生まれたのか?
そして何処へ行くのか?
繭の中で見た夢、与えられた名前。
灰羽が背を突き破り、その痛みに苦しむ姿に涙が出た。
話師との対話を通じて、罪を知る事と助力者の存在に気付く“ラッカ”、そしてもう一人の主人公である“レキ”の苦悩を主題にした物語は極めて人間的であり普遍的なものだ。
夢を思い出せないこと、それは自分の罪に向き合えず、手を差し伸べてくれる者に気付くことができない姿だ。
森の中、井戸の底で助力者の骸に出会い、夢を取り戻す“落下”は、真の名前“絡果”を得る。今まで身に付けてきたサンダルを脱ぎ、街の古着屋で貰った靴を履く姿は、他者との繋がりに気付くという意味で象徴的だ。
それに比べ“礫”のそれはより深刻に思える。あたかも煉獄で苦しむが如くである。
自分の境遇を呪い、怒り、他人を妬む。それでも彼女は踏み石として善行を積む事で救いを得ようとするのであるが、そこに告げらた夢の形は残酷なものであった。
その絶望の中、“過ぎ越しの祭り”を経て融和の心を取り戻し、“絡果”を仲立ちに、“轢”という罪付きから救われるのだ。
これは、美しいOPとEDに身を任せ、毎回ゆっくりと思索を楽しみながら、大切に観るべき作品であろう。