STONE さんの感想・評価
4.3
物語 : 4.5
作画 : 3.5
声優 : 4.5
音楽 : 4.0
キャラ : 5.0
状態:観終わった
主人公が持つ二面性の魅力
2期視聴済ですが、未視聴の体で書いてます。
元々、優れた頭脳を持つ者が人智を超えた能力を得たことにより、権力に戦いを挑む図式は
「DEATH NOTE」に通じるものがあるが、その行動内容はより直接的というか、過激な印象。
ブリタニア帝国という架空国家に占領された日本を舞台にした話で史劇、政治劇的要素が強いが、
この手のジャンル作品は異なるスタンスの数多くのキャラクターが登場するために群像劇スタイルを
取ることが多いのに対して、本作はあくまで主役であるルルーシュ・ヴィ・ブリタニアを中心とした
図式になっており、相棒的存在のC.C.やライバル的ポジションの枢木スザクのようなキャラでも
あくまで脇キャラであり、ルルーシュより一歩下がった描写になっていた感じ。
そのために作品自体の魅力がルルーシュというキャラの魅力に負っている比重が高いように
思えた。
そのルルーシュの行動だが、大衆(イレヴン)の支持を得るという点ではヒーローものの要素が
あるものの、目的のためには手段を選ばぬところなどはかなり悪的側面があり、ピカレスクものの
色合いを強く感じる。
ルルーシュが得たギアスはとんでもなくチートな能力であるが、それを持ってしてもそうそう
順調にはいかない。その要因としてはルルーシュが野望を抱くも非情になりきれないところに
ありそうで、特にスザクに対する甘さなどが目に付く。
この甘さに関しては観ていてイライラしたりもするのだが、この非情になり切れないところが
ルルーシュというキャラの面白いところであり、ストーリーをも面白くしているように思える。
非情に徹すればうまくいったであろう展開は何度か見受けられたが、逆に非情になり切れない
ルルーシュゆえに滲み出てしまう優しさなどが、黒の騎士団が彼に付き従う要因の一つになっている
ようにも思えた。
ストーリー的には運命の悪戯的なシチュエーションが幾つかあったが、それにルルーシュの非情に
なりきれない部分が加わって、より状況を複雑なものにしてしまった感がある。
シャーリー・フェネットの父が死んでしまった件自体は一種のアクシデント的なものだが、
その後のルルーシュのシャーリーに対する行動は彼の一種の優しさによるものなのだろうし、逆に
ユーフェミア・リ・ブリタニアに関してはルルーシュが彼女に対して歩み寄りを見せたことが
アクシデントを生み、とんでもない悲劇を引き起こしてしまったといった具合で、いずれも
状況的にはひどいものだが、ストーリー的には面白いアクセントになっていたんじゃないかと。
このルルーシュに対峙する立ち位置にいたのがスザクで、テレビ放映時にはとにかく嫌われていた
印象が強い。
名誉ブリタニア人としての生き方自体を売国奴として批判する声があったが、史実でも徹底抗戦を
して民族や国家が滅ぶより、恭順して命脈を保った例が幾つもあり、単純な批判はできない感が
ある。
むしろ気になったのは彼の考える正義が独善的であることで、ルルーシュのやり方などは批判を
受ける要素こそあれ、一貫したものであるのに対して、スザクの考える正義はそれが感じられず、
かなり矛盾したものを感じる。
現実でも行動や思考に原理原則がなく、その場その場の感覚で動く人がいたりするが、この手の
人は行動内容全体で見てしまうと何がしたいのか判らないものになってしまうことが多く、スザクも
そんな印象がある。
出発点である父殺しも、父の徹底抗戦を止めようとしての感情的行為のようで、その先などは
あまり考えてなかったみたいだし、以後はこの件に関する贖罪意識が、彼の行動を更に一貫性のない
ものにしてしまったような。
戦闘に関してはロボットものの要素が強く、本作においてはナイトメアと呼ばれる兵器がそれ。
作品世界においては核兵器のような大量破壊兵器が存在しないため、このナイトメアが戦局を
左右する大きな存在になっており、このナイトメアを使った戦闘それ自体がなかなか面白く、加えて
本作世界の中心となる兵器ゆえにブリタニアサイドと黒の騎士団サイドによる開発競争なども興味
深かった。
更にメタ的には、ナイトメアに搭乗することでパイロットが何者か判らなくなるという一種の
マスクのような効果が、ストーリーをより面白しくしていた感がある。
ルルーシュのようにゼロとして自発的に正体を隠しているのとは異なり、ランスロットにスザクが
搭乗していたのをしばらくルルーシュが気付かなったのはその典型だし、紅月カレンが紅蓮に搭乗
する図式もスザクなどに対しては同様の効果があったように思えた。
ストーリー的には終盤においてはブラックリベリオンを引き起こすも、ナナリーが連れ去られると
ルルーシュはそれを追って戦場放棄。
このナナリーという存在が彼の行動の根本的なものゆえに、それが弱点にもなってしまうわけで、
ナナリーによる野望に対する原動力と弱さという二面性が、ルルーシュの非情さと優しさの二面性と
同様に話を面白くしていた感がある。
最終的はスザクにゼロの正体がばれるも、思いっきり中途半端な感じで終わってしまったわけで、
今後の展開が気になるところ。
2019/10/26
2020/01/12 誤字修正、改行位置変更