プラ さんの感想・評価
4.2
物語 : 4.5
作画 : 4.5
声優 : 3.5
音楽 : 5.0
キャラ : 3.5
状態:観終わった
初恋、そして・・・
とある男女の初恋の儚く終わりを迎えるまでを描いたストーリー。
主要な登場人物は貴樹と明里。二人は小学生の頃に出会い、お互い東京に住む幼馴染のような存在で、二人の間には「特別な気持ち」があった。しかし、それは長く続くこともなく、明里の栃木への転校を契機に変化する。
●第一話「桜花抄」
中学生になった二人はしばらく疎遠であったが、明里が貴樹へ手紙を出したことをきっかけに文通でのやり取りが始まる。二人の間にあった特別な感情を思い出し始めていたころ、貴樹の鹿児島への転校が決まる。
もう一生会うことがないと感じ取ったのか、貴樹は転校前に明里に栃木へ会いに行くことを決意する。しかし、その道中は大雪で電車が止まったり、懐にしたためた「明里への手紙」が強風で飛ばされたり、まるで二人の最後の逢瀬となることを暗示しているようだった・・・
夜も深くなったころ、貴樹はようやく栃木にたどりつき、ずっと待っていてくれた明里と念願の再会を果たす。二人は雪原の中にあった小屋で夜通し語りあい、口づけで想いを確かめるのであった。
次の朝、お互いの明るい将来を願って、二人は別れる。明里は「貴樹への手紙」を持ってきていたが、結局渡すことができなかった。もしかしたら、これが最後だと悟っていたのかもしれない・・・
●第二話「コスモナウト」
貴樹が転校した先で、貴樹に恋した少女を描いた物語。
その少女は、転校して来た時から貴樹のことが好きで好きでしかたなかったが、その想いを高校卒業まで結局告げることができなかった。
その少女は悟っていたのである。貴樹が何かの高みを目指していて、自分のことなんか眼中にないんだ、と。その少女は好きな気持ちを一生伝えず墓場まで持っていこうと誓ったのである。
●第三話「秒速5センチメートル」
時が経って、貴樹は高校卒業をしてすでに社会人になっていた。明るい未来への高揚感と期待感に胸を膨らませて種子島を出たはずの貴樹であったが、自分が何を目指しているのかいつの間にかわからなくなり、情熱と純粋な気持ちを失って限界になり、退職してしまう。3年間付き合っていた女性もいたようだが、退職したタイミングで別れを告げられる。そのメールには「1000回メールしても心は1センチしか近づかなかった」と、書かれていた。
貴樹は、明里への淡い想いをまだ捨てきれていなかったようである。このタイミングである「夢」を見る。明里と一夜を過ごしたあの夜のことである。あの時、二人はまた出会えるだろうと確信していた。明里への未練が、貴樹にこの夢を見させたのだろう・・・
同じころ、明里は新しい男性といよいよ結婚することになっていた。そのタイミングで「夢」を見た。貴樹と同じ夢である。明里はこの瞬間に貴樹への想いを断ち切ったのであろう・・・
●エピローグ
そして、ここである曲とともに流れる映像。貴樹が転校してから、二人はしばらくは文通していたらしい。二人は想いを馳せていたのだが、高校生になってからはしだいに文通が途切れるようになり、結局疎遠になってしまった。お互い、自宅のポストを開けたり、郵便ポストをふと振り返ったり、そこにいるはずもない相手をまるで探すかのような二人の姿が、とてつもなく切ない・・・
お互い大人になって、それぞれ別の道を歩み始めた二人だが、「夢」を見た日はなんとなくそこにいるような気がして、ふと探してしまう。交差点で、向かいのエスカレーターで、明け方の街で・・・
「言えなかった好きという言葉」。貴樹と明里の気持ちは通じ合っていたけど、おそらく一回も交わされなかったであろう「好き」という言葉。あの時、その言葉を口にしていたら・・・「夢」を見た二人はそうを思っていたのだろうか。
”いつでも捜してしまう どっかに君の笑顔を
急行待ちの 踏切あたり
こんなとこにいるはずもないのに”
踏切を通りすがった男女。お互いに気付き、ふと振り返るも、踏切を通る電車が遮ってしまう。「こんなとこにいるはずもないのに」と思いながらも、貴樹は踏切の先を見つめていたが、二本目の電車が踏切を通り終わるころには、もう女性はいなくなっていた。
貴樹は何を思ったのだろうか。最後はすがすがしい笑顔で、歩みを始めるのであった。
・・・・One more time, One more chanceの曲とともに流れる最後のエピローグは、言葉で表現できない切なさである。これまでの静かなストーリー調とは対照的な、もはや暴力的といえるほどのエピローグの情報量が脳天を突き、感情の高ぶりを爆発させ、涙腺を殴ってくる。まったく、なんというクライマックスの魅せ方であろうか。一言で言えば「初恋を諦めきれなかった男、初恋を断ち切った女」という何も特別ではない物語なのであるが、たたみかけるような映像で思わず心を揺さぶられてしまう。もう、エピローグだけを何十回と繰り返し見てしまうほど、好きである。
I wish I'd met you one more time,
I wish I'd had one more chance to meet you,
ああ、切ない・・・