こたろう さんの感想・評価
4.1
物語 : 4.5
作画 : 4.0
声優 : 4.0
音楽 : 4.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
蟲とは、昆虫でも妖怪でもありません
蟲(むし)と言いますが昆虫の類ではなく、我々とは異なる存在、生命の原初に近い理の生き物(のようなもの)だそうです。
妖怪や物の怪ともちょっとニアンスが違う、遍く我々の周りに存在し、自然現象のように我々に関わることのある不思議なもの。それが蟲。
本作は、その蟲と人との営みを描いた作品。
蟲に関する様々な事を取り扱う職業「蟲師」のギンコが主人公です。
蟲師が主人公ですが、全て1話完結のエピソードで構成されており、各話各話で中心人物は異なります。
ギンコは基本的に、その蟲にまつわる事象に俯瞰した立場で関わる者。
妖怪退治のように積極的に蟲を祓ったるするのではなく、蟲の世界と人の世界の折り合いをつける役割です。
関わった人は必ずギンコに救われるとは限りません。命を落としたり後悔したり、哀しい話も多いですが、それは自然の中で事故や災害に合うのと同じ事。無理に抗ったすることはぜず、人間の立場でできることだけ手を貸すというスタンスです。
独特の摩訶不思議な生命である蟲。
蟲を通して大自然への畏怖や、人の在り方などを考えさせる作風は、他に類を見ない本作ならではの世界を作っています。
派手さもないし、エンターテイメント的な盛り上げ方もしません。起こった事象を淡々とトレースしていくだけなのですが、吸い込まれるように目が放せなくなります。
表現しづらいですが、独特の自然な”空気”の波長が心地いいというか、静かさが気持ちよく感じられる。
この雰囲気の醸し方、お見事だと感服しました。
いまどきのアニメとは一線を画した、しっかりとした独特の揺るぎ無い世界観をもつ作品。
タイトルやパッと見の雰囲気で敬遠するには勿体無い良作です。
怪異を味わうのではなく、”自然”と”人”に向き合った物語をご堪能いただけます。