たんたんたぬき さんの感想・評価
4.2
物語 : 4.0
作画 : 4.5
声優 : 4.0
音楽 : 4.5
キャラ : 4.0
状態:観終わった
監督の仕事
映画とTVアニメってストーリーが違うと思う。というより以前アビスで書いたけど、映像ばかり注目されるけど監督の大事な仕事って時間管理だと思う。実写だとこれがすぐに納得してもらえる編集作業が入るからになる。アニメは原画を創るのでお金の問題でそれが無い。映像から選んで編集するって作業が無い。
絵を選ぶ作業が軸なんだけど、それに伴ってストーリーの編集も入ってくる。アニメも当然監督がこういうの管理してる。基本余程の事が無いと脚本の上に監督が居る。その余程の作品はまどマギで脚本家の一発手直し無しだったらしい。あの作品は監督より脚本家の作品だと思う。原作のある作品はほとんどが編集される。
その中にただ筋展開を選ぶだけじゃなくて、作品としてどう話を時間的に配分していくかが当然入ってる。あくまでマニアじゃなくて平均的人間を相手にするなら面白い話しっては基本は簡単で、冗長さを消すことに尽きるんだ。無駄なく押し込められたお弁当こそが面白い話しと言えるだろう。
この作品はそこが良い所だとおもう。素材を見るとなんてアリキタリでありふれてるんだと思わないか?となる。この作品のツボは雑多な要素の編集にあると見ている。ブレンドよりも、バラバラに使ったものがそのまま組み合わさってる。君の名はブレンドされた世界観を作り上げてない。ストーリーとしてくみ上げてるんだ。
私は新海監督かなり知ってるほうだと思う。逆に星を追うものぐらい見てないだけで大半見てる。その私から見てなんでこんな作品創れたんだ?ってすごく驚いてる。もし君の名はしか見た事無い人が居たら是非過去作品を見て欲しい。人間の能力について試して無い事は未知だと分かると思う。
人の能力は過去の実績で見られると思う。そこからならこの人が何故こんな作品を創れたか?全くの謎だと思う。この人を選んだプロデューサーがすごいと思う。簡単に言えばこれまでと違うのは大衆向けなんだと思う。こういう場合過去の持ち味を上手く大衆化するんだ。それが出来た監督が宮崎監督になる。
君の名はそういう作り方じゃない。全く新しい新海作品だと思う。70%ぐらい面白いツボは過去作品と関係が無い。私の言ってる事は過去作品を見れば絶対に分かる。持ち味が出てないわけじゃない。過去刺激になってた部分が、ものすごく薄められてる。ここまで薄いと別物と読んで良いだろう?
正直言えばこれが初監督作品だといわれても納得する。これで恋愛という縛りがなければ宮崎駿の再来だと言える。宮崎監督の一番のすごさはそのバリエーションの豊かさで似たタイプは手塚になる。
私の作品の評価より自論紹介になってしまうけど、私は大衆向けとマニア向けは刺激が違うと思ってる。馬鹿にしてると思われたくないけど、大衆向けってのはあんまり頭使わない刺激が多い。あくまであんまりなので。マニアってのは好きだから考えてくれる。大衆を馬鹿してるわけじゃなくて、大人の場合仕事以外でそんな一生懸命趣味でもないのに息抜きで頭使わないでしょ?
じゃアニメ漫画を趣味にしてる人はどうなんだ?確かにマニアは居る。だがアニメ漫画の本質ってのはあんまり頭使う物語じゃないと思う。だから考えなくても楽しめる物語にシフトしないといけないんだ。これが新海監督は出来てる。
冒頭の男女入れ替えこれによって分かりやすい刺激を作る。次にこれを遠距離にする事でアリガチな男女逆転に対して個性を創る。後は日常の中で都会と田舎の対比をして新しい刺激、おかしな行動を起こしてそれを観客に観察させて刺激にする。とても分かりやすい刺激を小まめに繋いでいく。
ちなみにこの遠距離の個性こそが新海監督の過去作との繋がった部分になる。届かない思いが多分新海監督のテーマでそれはデビュー作ほしのこえからやってるのでかなり思い入れのあるテーマだと見てる。じゃ新海監督らしいじゃないか?ものすごい薄めてあるので、これは別物だから。
単発の刺激を繰り返して、その場その場で退屈させないようにしてて、これを連続させて、どかんと来るのがヒロインを含めた町そのものが今は無いってのが分かる部分だと思う。王道、徹底的な物語の王道起承転結の転になる。これは教材になるぐらい上手い転だと思う。転とは何か?展開の驚きの刺激を最大限に出す部分。そこからの過去を変える結の流れも見事。
短期的に刺激を繋いで飽きさせない、そして単調な刺激の連続にならないように上手く全体の刺激に切り替える。そしてそれは最大の刺激を持って行う。ストーリーの刺激だけだとここまで退屈になってしまう。サビが良い曲はどの曲も大体そうなる、だがそこに至るまで退屈じゃない刺激に溢れてる部分に私は注目する。
大きな差はつかないが、退屈な気持ちに長時間させない。これが時間管理の1つの重要な手法になる。まあサビ自体の大きな差もやっぱり差になる部分なのでそこがすごいのはもちろんなのだけど。後の楽しみのためにじっと我慢してみ続ける、私はそういう小説的な楽しみ方が映像作品では受けないと思ってる。
ストーリーの整合性ばかりに眼を向ける人間ってのは小説的な古いストーリー論だと思う。絵的なストーリーはそれより重視うるものがあると思う。漫画も似てる、だが漫画と映像作品との決定的な違いは物語が進む時間が監督によってコントロールされてるって点なんだ。適切な時間に客を退屈させないように分かりやすい刺激を作る監督じゃないと大衆向けは成功しにくいだろうと私は考えてる。
過去の新海監督の作品はそれが出来ていたか?と言うと、何故こんな作品が出来たのか?過去の実績からはさっぱり私は分からない。過去の監督の作品が文学小説だとすると、これはラノベだぐらい違う作品だと思う。
あ、棚を見たら私新海監督評価した事が無かった。だから映像にも一応触れておこうと思う。私が映像が嫌いなのが映像ばかりで他の部分の力量の足りないクリエイターがアニメ製作者に多いからになる。原画からあがってきて監督になる人って物語についてどう考えてるのか?と思う。漫画で絵が綺麗なだけの人なんて売れないでしょ?そういう人は原作者と組んで始めて力を発揮できる。アニメで言えば脚本化がそうなって欲しいのだが、アニメはそうなってない。
ルーカスみたいな原作を創れる監督ってほとんど居ない。宮崎駿は漫画家が過去に軸がありだから原作を創れるし、彼の漫画ナウシカは私にとって最高傑作に近い作品になる。アニメの面白さをなんだと思ってるんだ?って思うから映像馬鹿が嫌いなんだ。金ばかりかかるくせに大して刺激にならない映像ってのが本当に嫌いで。
映像が単純に嫌いなわけじゃなくて、映像以外が金になる要素なのに映像ばかり金が費やされるアニメって媒体にほとほと嫌になってるからってのがある。
だが新海監督の映像は確かに凄いね。根本的には実写とあまり変わらないので、すごい衝撃的じゃないけど、ニッチ的な視点ならこれ十分実写と差別化された個性があると思う。私キラキラ妄想世界と読んでるけど、実際の現実を心象風景としてキラキラさせる絵ってのが新海監督の売りなんだと思ってる。
ピカソなどの芸術などと違ってシンプルに綺麗って思う絵だと思う。そういう本能に訴えかけるシンプルな美。特にこれが顕著なのが過去を振り返るような流れで創ってある秒速5センチメートルなんだけど、主人公の過去の恋愛の心象風景というような美化を映像化したものじゃないかな?と見てる。
今回の場合ハッピーエンドなのでその辺り違うのだけど、一度は失ってしまった過去なのでそのあたり良いんじゃないのかな?とは思う。リアルじゃなくて良いじゃない、嘘でも良いから思い出はキラキラしてほしいもんだ。
後音楽にも触れておこうと思う。秒速が顕著だけどあれ山崎まさよしの歌を膨らましたような内容だった。だからある意味長編PVと言っても良いような内容だった。その経験が生かされるのか?音楽の使い方が上手かったと思う。煩いという人もいるけど、そもそもPV的な創り方で音楽と新海作品は密接な関係があるんじゃないか?と思ってこの作品で知ったミュジーシャンだけど高い評価してる。