oxPGx85958 さんの感想・評価
2.8
物語 : 3.0
作画 : 3.0
声優 : 3.0
音楽 : 3.0
キャラ : 2.0
状態:観終わった
重厚な枠組みの割に軽すぎた実装
追記
原作のマンガを読んだので感想を追記しておきます。
この原作は評判に違わぬ傑作でした。ストーリー全体の流れも、各キャラクターの描写も、ちょっとダサめのギャグも、全5巻というボリュームの中でいいバランスが取られていて、一つの完結した物語を丸ごと楽しんだという満足感がありました。
この枠組みの中で、前に指摘したような問題点は大した欠点に感じられませんでした。アニメ独自の問題と断じていいと思います。
原作のマンガは、少ないコマ数で多くの情報と情感を伝えるのが非常に上手い、というタイプのものでした。アニメ化にあたったスタッフは、行間にあったもの、暗示されていたものを、脚本・演出・演技のレベルで明示するという方針を取ったということでしょうが、出来上がったものを見ると、そうやって明示された部分が過剰で余分な要素になっていたように思います。
1つ例を挙げると、マンガ版の登場人物たちはアニメ版と比べると全体的にクールでかっこよく感じられました。この部分だけでもスマートにアニメ化できていれば、全体的な雰囲気はずっとよくなっていただろうと思います。
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本作は私にとって、今期、最も気になる作品だったことは間違いありません。出演声優の顔ぶれに惹かれて見始めて、SF的なアイデアがかなりしっかりしていることに感心し、ストーリー全体に関わるいくつかの大きな謎に驚かされ、最終話までの流れを楽しみに見ることができました。
が、終わってみると、作品全体の枠組みの重厚さと、細かい部分での脚本・演出・演技の軽さのミスマッチが気になりました。この軽さは原作由来のもので、どうしようもなかったのかもしれないが、アニメ作品としてはもう少しいい落としどころがあったのではないかと。
登場人物たちの境遇は、理屈の上では悲惨なものなのに、脚本・演出・演技のせいでまったくそんな感じがしないので、物語全体の感情的な側面に説得力がまったくなく、それが翻って、個々の声優の演技を白々しく見せてしまっている、という印象がありました。
物語の面で私が感じた最大の問題は、{netabare}主人公たちがそもそもこの状況に追い込まれた理由である「登場人物たちのアイデンティティの問題」と、旅の過程で判明する「地球の問題」の扱いがうまくつながっていないということでした。話の流れとして、主人公たちはなんとしてでも前者は解決しなくてはならないが、後者は別の問題であり、論理的にも経緯としてもつながりがないし、後者が解決されたら前者の解決に役立つという根拠もないし、そもそも登場人物たちが後者を解決しようと思う動機も薄い。最終話に向けてのこの2つの大きな問題の解決のされ方に違和感があるせいで、物語がちゃんとした結末を迎えたという感じがしませんでした。{/netabare}
ステレオタイプのキャラクターに押し込められたがゆえの「流した演技」が充満する作品の中で、主人公役の細谷佳正が輝いていました。この人のおかげで、かろうじていくつかの重要なシーンに説得力が生まれていたと思います。
主人公のカナタという人は、物語の中での「スター」なわけだけど、そのスター性をちゃんと体現できていた、ということ。