鰺鱒 さんの感想・評価
4.3
物語 : 4.5
作画 : 4.0
声優 : 4.5
音楽 : 4.0
キャラ : 4.5
状態:観終わった
リスペクトの仕方
[2019/09/24 v1]
漫画原作であることを知っていた程度で前半を視聴、後半へ。
相変わらず原作は読んでいません。
多くの方にお勧めしたい作品です。
ただし、一期からの継続が必須と思います。
ずいぶん前に視聴完了していたのですが、終わりにそれなりのピリオドは打ってくれたものの、明らかに「俺たちの戦いは(略)」な締め方だったので、何となくレビューしづらく感じてしまい、そのまま漬け置きにしていました。
面白いか面白くないかで言えば、めちゃくちゃ面白かったです。その理由は他のみなさまが書かれているとおりと思います。クセのある作画と、それを軽くオーバライドする面白さはそのままに、新たなキャストも加えつつ最後まで突っ走ったと思います。
第一期に対しても思ったのですが、作者の異文化に関する表現が素敵だなと思いながらみていました。第二期では、その中でも「異(い)なるもの」への接し方の表現が印象に残りました。
{netabare}
それに気づかせてくれたのは、尾形の振るまいでした。
アシリパ始めとするアイヌの人々の文化に対し、杉本、谷垣、尾形の3和人はそれぞれ異なるスタンスで接しているように感じました。今日、国際化()の波におされ否応なく海外からの人、文化の受け入れをしなければならない日本、日本人の困惑に対する指針の提示のようにも見えました。
谷垣のそれは究極の「郷に入っては郷に従え」で、同化そのものに見えました。没入であり、同化です。自ら異文化を構成する要素と化すわけで、初期の戸惑いや理解不足からくる衝突はあるかも知れないが、最終的には異文化そのもの(作中ではアイヌ文化)が変わらず、そこにあることになります。ただし、谷垣の和人としてのアイデンティティはいつか消失し、和人・谷垣は消えてなくなることになる。
杉本のそれは融和・融合を目指すスタンスと解釈しました。これはある面においてアシリパも同様と見て取れます(同時に、アシリパは後述の尾形スタンスと同じにも見えます)。このスタンスがもたらすものは、究極的には新しい文化であり、変化であると思います。うまくいけばアイヌ、和人ともにそれぞれのアイデンティティを保持しつつ、両者共存が可能となるのだと思います。しかし、うまくいかなかったとしたら融和・融合から一転して衝突・闘争へと変化してしまうのでしょう。
尾形は、前2者とは一線を画した「交わらない」もしくは「自分を変えない」スタンスを取っているように見えました。いずれのアイデンティティもそのままであり、他者の持つものの中で取り入れても良さそうなものはそこだけ取り入れていく、というスタンスと思います。これは拒絶とは異なるものと思います。「互いに尊重し合う」の一つの形なんだと思います。終盤に尾形が発したチタタプは、だからこそ重さと驚きを伴ったと感じます。
これ、多分正解はないんですよね。また、自分が異文化に入っていく立場で考える場合と、逆に入ってこられる側の立場で考える場合とで判断の善し悪しがぶれるものだとも思います。身勝手ですが。
(なお、日本を含めた世界の歴史をみるに、現実としては上記のいずれでもない手段・手法がとられてきていますが・・・・、ここでは脇においておきます。)
本邦の現状でみると、「来る人」に対しては谷垣スタンスを要求していると思います。ところが、いざ自分が「行く人」となった場合、尾形スタンスを取らざるを得ないところがあります。不安だし、なによりわかりませんからね、行った先のことが。そもそも、「行く人」にあまりなりませんよね、日本人に限った話しじゃないですが(旅行は除外です)。杉本スタンスはと言えば、忌避されがちではないでしょうか。難しいというか、感覚がわかない問題なのかも。
{/netabare}
本作では、異なるものへのリスペクトの仕方を教わったような気がしました。
問題は、続きがどうなるのか、です。