たわし(爆豪) さんの感想・評価
3.5
物語 : 3.5
作画 : 4.0
声優 : 3.0
音楽 : 3.5
キャラ : 3.5
状態:観終わった
セカイ系の「限界」
新海誠、細田守、伊藤智彦、長井龍雪。
この4名の監督はアニメーションにおけるセカイ系アニメ監督の代表格であり、
今回はその一角、「ソードアートオンライン」で名を馳せた伊藤智彦監督がほぼオリジナル脚本で映画化したSF映画です。
直接のネタバレは避けますが、本作はいわゆる「どんでん返し」という展開が、計3回もある内容で、実はこれが本作の方向性の足を引張ている原因にもなっていると思うのですが、SFとしては「量子コンピューター」作品内でも触れていますがオーストラリアのSF作家グレッグイーガンの「宇宙消失」1992年や「順列都市」といった「量子力学」や「パラレルワールド(多元宇宙)」ものにあたります。
似たような題材に2006年の「涼宮ハルヒの憂鬱」「ゼーガペイン」や映画では「マトリックス」がありますが、どちらかといえば今回は2000年代に流行した「セカイ系アダルトゲーム」の影響がかなり大きいと思われます。
今年は新海誠監督の「天気の子」、伊藤智彦監督の「HELLO WORLD」、長井龍雪監督の「空の青さを知る人よ」などの「セカイ系」アニメ映画の当たり年だと思われますが、
今回「HELLO WORLD」も「天気の子」同様に、「自分と彼女(もしくは彼氏)の問題が世界の終りと同等の価値を担っている」
という発想はジュブナイルとしては良いですが、最近の少年ジャンプの漫画作品や「進撃の巨人」や「ダンジョン飯」などの地に足がついた論理型異世界系の作品と比べると、どうしても「狭く浅い」結論に思えてしまい、前述した「セカイ系」に真実味や現実味といったものがなく限界が見えてきたように思えました。
もはや、今の時代には「セカイ系」や特定の少女漫画における「彼氏、彼女の問題=世界とのつながり」という縮図にリアリティを感じない世界に突入しているのだと思います。
今の時代、ネットにより情報そのものが多様になり、どぎついポルノ映像から、辛辣な世界的事件の生配信など、更には街の人のほとんどが同様の共通幻想を抱けない時代には、いくら驚くような「どんでん返し」が3回以上あったとしても、この内容では浅い議論にしかならないように思えました。
今の時代の若い人はこの作品よりももっと「リアリスト」で「さとり世代」とまで言われるくらい世界というものに絶望しているとも言われます。
ですが、本作品では結局またいつものように彼女の問題と世界の問題が同列に扱われ、「新しい時代の幕開けだ。(HELLO WORLD)」と豪語していましたが、見ている側の反応は非常に薄かったです。
もう少し、最近の世間に対する見識と「この多様な時代にどう生き抜くのか」といった議論まで踏み込めるハードな展開までもっていけるような作品を今後期待したいと思います。