蒼い✨️ さんの感想・評価
2.6
物語 : 2.5
作画 : 1.5
声優 : 3.0
音楽 : 3.5
キャラ : 2.5
状態:観終わった
アイドルアニメとは?
【概要】
アニメーション制作:Ordet、タツノコプロ
2014年1月 - 3月に放映された全12話のTVアニメ。
監督は山本寛。
【あらすじ】
芸能活動にトラウマがあり、スカウトを断っていたI-1clubの元センター・島田真夢が、
「もう一度アイドルをやりたい」と心変わりをして加入したことにより、
とうとう7人が揃った新人アイドルグループ「Wake Up, Girls!」
だが、所属する芸能プロダクション「グリーンリーヴス・エンタテインメント」の社長・丹下が、
会社の資金を持ち逃げして失踪。そのために予定されていたデビューライブは中止。
このまま何もしないまま終わりたくない。1回だけでも7人で歌って踊ってパフォーマンスをしたいとの願いから、
2013年12月24日。仙台市の勾当台公園。SENDAI学生メタルバンド祭に飛び入りで参加。
雪が降る夜の極寒のステージの上で7人は衣装が無いので学校の制服でパ○ツを見せながら唯一の持ち歌を披露。
客がまばらな初舞台ではあったが、彼女たち7人は確かに充実をしていた。
そして年が明けて、経験不足で頼りなさすぎるマネージャーの松田は、
会社の金を持ち逃げした丹下社長に代わって事務所の仮責任者の立場にいた。
社長もお金も戻ってこずに手元にあるのは未払いの資金の請求書だらけではあるが、
アイドル活動の第一歩に手応えを感じた彼女たち7人のアイドルは、やる気を出していた。
コネも金もない松田は、芸能プロデューサーの須藤という男の誘いに乗って、
彼の斡旋する仕事で彼女たち7人芸能活動を再開することとなった。
しかし仕事の内容は、スーパー銭湯の休憩所で際どい白水着で歌って踊って、
更には客の相手をする営業という胡散臭いものであった。
【感想】
まず最初に!
このアニメをリアルと評して称賛する方もいますが、ちょっと考えて欲しい。
劇場版ではラーメン屋のアルバイト店員だった夏夜がセクハラ客にブチ切れて、
我慢しろ!と命令した店長と喧嘩別れしたラーメン屋は仙台に実在します。
名前と店構えがそのまま使われているラーメン屋は仙台でも美味しいお店として有名です。
モデルとなったラーメン屋の宣伝どころかセクハラ容認飲食店の汚名が作中でついています。
次に、第2話で7人のアイドルが裸に近いきわどい白ビキニを着て歌って踊って、
休憩所内の男性客全員の性欲の晒し者にされた挙げ句に、
舌なめずりをして唇を震わせる性欲オジサンにマウストゥマウスでキスされそうになるという、
セクハラ営業の舞台となったスーパー銭湯も仙台に実在します。
モデルとなったスーパー銭湯は家族連れが訪れる健全な入浴施設であり、
このアニメのように未成年の少女たちに際どい白ビキニでお酒のお酌をさせたり、水着撮影会をしたり、
更にはお触りOKで少女たちを玩具にするという風営法・児童福祉法に違反する施設ではありません。
共同制作の老舗・タツノコプロの名前で申請されて子供向け番組だからという言葉を信用して、
ロケハンの許可を出したのにも関わらず、
事前の説明も無しに違法風俗営業の温床として店長・利用客ともに摘発・逮捕されても仕方がない悪質なクズ扱い。
アニメによって最大限に侮辱された名誉毀損・営業妨害の被害者であるスーパー銭湯が激怒し、
監督が代わった後にすら許されなかった対応は社会通念上、仕方がないですね。
ガルパンで戦車が突っ込んでアニメファンの間で有名になった割烹旅館の例のように、
アニメと聖地でWin-Winの関係に持っていくことが出来なかったか?の疑問。
ブラック営業展開の舞台にするならば完全に架空の施設にする等の配慮が皆無。
聖地アニメを自称しながら面白半分に聖地を愚弄する浅慮が根底にある。
物語の舞台として提供されながらセクハラだらけの土地として序盤で中傷された仙台とは、
監督にとって一体何だったのでしょうか?
7人の担当声優とアニメキャラをシンクロさせるという意図で進められた企画の上で、
地元仙台市民である銭湯客をスケベで気持ち悪いオジサン軍団にしてガールズにセクハラしまくるとか、
完全に監督が自分の趣味で楽しんで作ってるじゃないですかね?
被災地アニメの名目もビジネスの種であり、地元仙台に散々泥を塗る浅はかさを見せつけられた上で、
聖地商法の綺麗事をあとでやられても素直に信じることが出来ませんね。
インタビューで当時は辛かったと振り返るWUG声優が7人とも、
Twitterで監督からのフォローやリプに対して完全無反応を貫いている状態。
一方でキャラデザの近岡直氏や後任の板垣伸監督とは仲の良さを見せつけている。
こういうのを見せられると、このアニメの問題点は凡そ監督が起因するように見えてしまう。
リアルとフィクションが別の形でシンクロしているように見えますね。
また、7人のアイドルにいかがわしい営業を斡旋した悪徳プロデューサー・須藤は、
監督が2012年にtwitterで口論した著名なアニメ脚本家の會川昇氏が完全に外見モデルであり、
意趣返しに悪役のモチーフに用いたあげくに丹下の鉄拳制裁で顔を腫らして前歯を折るという、
私怨に基づいた薄暗い情念がありますね。
身勝手でいい加減な丹下社長を監督の分身キャラとして捉えると更に酷さが解りますね。
フィクションは架空の存在ではありますが、
人間の描かれ方にはクリエイターの価値観や倫理観が現れます。
新人アイドルが厳しいレッスンに耐えて結束を深めて成長して、大きな舞台を目指す。一見は王道物語っぽい。
だが見方を変えてみると。無責任でいい加減な女社長。無能なままで作中で成長しないマネージャー。
クズかったり無能だったりする事務所の大人のしわ寄せをアイドルたちが背負わされている状態。
事務所の大人たちは自分の職域で全く頑張らずに能書きだけたれて、努力してるのは全部少女たち。
何故かカリスマ天才作曲家とやらがノーギャラで自発的に協力してアイドルたちを鍛え直すという、
社長視点の超ご都合主義は全部監督の価値観や人生観に拠るのではないですかね?
自分が適当にやってても、周りの優秀な監督や演出家や作画陣が解決してくれたハルヒ時代の栄光を、
延々と引きずっていて、しかもそれが自分の功績だと勘違いしている。
技能は何も無いけど人に命令したい。人の仕事は自分の手柄。失敗したら全部人のせい。
プロジェクトの上に立つものは自分では何も出来なくても構わない。
下の連中は血反吐吐いて俺のために頑張れ!というトンデモナイ甘え。
監督の組織観には大いに引っかかるものがありましたね。
このアニメの制作現場で、こんなエピソードがあります。
・放送まで2週間しかない状況で、撮影までいったカットを突然リテイクを命じてきた。
・モブがたくさん歩いているシーンではあるが、スケジュールに合わせた演出にしてたのが、
不自然だから全尺手書きで描け!とキレ気味。
・作画カロリー&技術的に高度過ぎて不可能だから、絵コンテの時点で別の形に変えたのに、
土壇場になって駄々こねまくってアニメーターたちは本気で嫌になった。
結果として第4話の白木と大量のモブのシーンが作画崩壊してしまうという、
アニメーターだってやりたくて作画崩壊させたわけじゃない、全部監督が元凶。
アニメーターは命令すれば何だって出来る出来て当たり前。出来ないのは自分のせいじゃない!
現場で苦労する人たちと、適当やってても棚ぼたとコネでなんとかなっちゃう立場が上の連中。
この温度差がアニメを見ながらずっと頭から離れなかったですね。
・無責任でも横領犯でも、傍観しているだけで周りが解決しちゃう超ラッキーな女社長。
・アイドルたちをレッスンで調教する天才設定のカリスマ作曲家。
この二名は監督の分身ではないのか?
自分は雇われアニメ監督に過ぎないのに、ガールズ声優を私物化してのアイドル育成ごっこ。
2013年の1月の記者会見で報道陣の前でガールズ声優全員に自分に絶対服従の90度お辞儀をさせると、
扱いが喜び組のごとくであり当時未成年4人を含む彼女たちにハラスメントをしていた疑惑もある。
アニメーターや声優に対するリアルでの姿勢がアニメの中の両者に反映されているのではという懸念。
成功者は皆が努力している!と過密スケジュールでアイドルにレッスンを課す天才設定作曲家。
そして、俺の満足行くものを見せろ!アニメーターに地獄を強いるが、自分では絵も描けない監督。
そっくりであり、だからこそ…こいつらがなにか名言っぽいことを口にしても響くものが無い。
上に立つ者の言葉の裏付けになるキャラ描写による説得力が抜け落ちている。
他に気になったこととして、これはアイドルの成長物語であり、
厳しいトレーニングを積んだ成果は後半のステージ上の作画や演出に表現されて然るべきですが、
大事であるはずのライブ作画がヤシガニっててひどかった件。
作中で一番出来が良かったライブシーンがデビュー時でアイドルとして全く磨かれてない状態での制服ダンス。
仙台に実在する高校の制服にも関わらずに不自然にスカートがハイウエストで、
シャンプーハットみたいにめくり上がってパ○ツが見えてしまうという、
監督の性癖を実現するためだけの、おかしなご都合主義がありますけどね。
天才設定作曲家やトレーナーの猛特訓で得たものが、「極上スマイル」のショボ作画なダンス。
進化したどころか大幅劣化にしか見えない。何故こうなったかと言うと監督のワガママリテイク連打で、
スケジュールが崩壊してしまった。配分や工程管理が全く出来ない者が上に立つと現場の人間が苦労する例。
元々が炎上上等の監督ではありますが、だからこそ実力で批判を黙らせないといけないのに、その域に達していない。
WUGの新人声優たちや、脚本家の待田堂子さんなどスタッフは頑張った。
ストーリー上は部分的な感動っぽい演出や音楽がついた。
例えば、壊れてた島田真夢と母親の関係が真夢の晴れ舞台を通じて涙で和解するシーンが有る。
しかし、その晴れ舞台である「極上スマイル」のダンス作画がヤシガニってるせいで物語の説得力を失ってしまった。
ストーリーだっておかしい。I-1clubの元センター・島田真夢が脱退に至った悲劇の過去?だって、
明かされてみれば、契約違反で解雇通告された親友をかばったからによる連座。
仕事の上で契約守るのは当たり前で、嫌なら出て行けばいい。
別の事務所で仕事すればいい。ただそれだけの話。
親友以前にも、これまで解雇された人間が大量にいるのに、そいつらはどうでもいいのか?
『アイドルである前に人間です!』という台詞が虚しい。
こういう欺瞞があるがこそ、感動も説得力もない。物語の根幹に関わる部分が雑すぎて台無しですね。
監督の独りよがりさがアニメーターの作業を阻害してしまったために、
作画に与えた悪影響が大きすぎて台無しになってしまった作品。
合う人には合うのかもしれませんが、評価する人は監督個人のファンであり基準が甘くなってしまってる。
色々目に付く部分が多すぎるアニメというのが正直なところでした。
これにて感想を終わります。
読んで下さいまして、ありがとうございました。