たわし(爆豪) さんの感想・評価
5.0
物語 : 5.0
作画 : 5.0
声優 : 5.0
音楽 : 5.0
キャラ : 5.0
状態:観終わった
紙とインクの染み
10年前、ディズニーで仕事をしていたとき、ディズニーランドの軒先で誰もが見たことのある「蒸気船ウィリー」の上映会を社員教育で見させられた事がある。
イギリスを代表する近代コミックス作家アランムーアはかつてコミックやアニメーションについてこう述べた。
「俺たちがやっていることは、紙とインクの染みでしかないものに、何らかの意味を持たせることだ。あとは、解釈するのは人それぞれで良い。どの解釈もそれはそれで正解であり、本質である。」
漫画やアニメ、絵画というのは、物質的に解釈すればそれは「紙」と「インクの染み」だという、まさにアナーキストならではの発想である。
それに個人が勝手に思惑を上乗せしているに過ぎないというのだ。
人の好みは様々であり、興味のない人にとってはアニメや漫画など意味のない無用の産物だし、本当に反社会的な内容なものが好きな人もいれば、牧歌的で平凡極まりない内容で感動する人もいるだろう。
だがしかし、その全てはただの「紙とインクの染み」である。
「映画は現実の役者が文字通り演技をしているので、その個人に感情移入しやすい。しかし、アニメはただの絵に過ぎないので、普通の人は感情移入しづらい」
と、どっかの映画評論家が話していたことがあったが、確かに現実ではありえない誇張されたモノが実写では表現できないアニメや漫画ならではの表現かもしれないが、「命のないものに命を与える。自我のないものに、自我を与える。」のもアニメや漫画でしかない表現な気がする。
ただ野ねずみの絵でしかない本作に、ウォルト・ディズニーは豊かな表情や感情を与えた。
それこそがアニメや漫画の本質であり、それを読み解くことができるのも我々が「人間」だからである。