101匹足利尊氏 さんの感想・評価
4.2
物語 : 4.0
作画 : 5.0
声優 : 4.0
音楽 : 4.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
私はこの作品の本当の価値が知りたいのです
放送時は毎週、録画視聴で追い掛けていた作品。
ですがレビューの方は何か作品を掴み切れてない感じがして、
長らく書きあぐねて来ました。
作画は本当に凄いです。
背景画も人物描写もただ繊細なだけじゃなく、
例えば、晩秋の落ち葉に人生の斜陽を重ねてみたり、
蒸気機関車の黒煙の中に人物を配置して、
彼が戦後、歩んで来たであろう人生の荒廃を暗喩してみたり。
こうした絵画や文学のような、
瞳の動き一つに幾つもの意図を感じる芸術性が本作の作画にはあります。
感性を研ぎ澄ませて視聴に当たれば、それだけ得るものがある、
心を磨くことができる逸品だと思います。
ただ……当時、私がちゃんと毎回、集中して観ることができていたか?
と言えば甚だ疑問でしてw
芸術絵画鑑賞レベルのアニメでも、劇場版一発勝負だったら、
私も全身全霊でぶつかるのみですが、全13回ガチンコ勝負は誠にしんどいw
ある回で、不覚にも酒が入った状態で視聴してしまったことがあり、
Aパートで寝落ちしそうになって、後日出直そうと仕切り直してみたり……。
こんな感じで集中して観る時間の確保に苦慮した思い出があります。
本作は連続TVアニメではなく、
劇場版中編を何作か重ねていく展開がベストだったのではないか?
そこに私が集中できなかった言い訳を求めたりもしました。
TVアニメだと毎回、正味18分+αくらいで締めなければならず、
登場人物の心理を掘り下げるにはやや時間不足で、
だからと言って次回に持ち越して、週を跨いでしまうと、
繊細に繋いできた心理描写が途切れてしまう。
この中編最適説は、後日視聴した『~Extra Episode』が数分の尺延長で、
第四話と第五話の間をジックリ描いたのを見て、さらに強く思うようになりました。
また、ヴァイオレットの成長物語に焦点を合わせたシナリオ構成に、
連続TVアニメという枠に当てはめるため、
時系列を整列し直したような違和感も覚えたりもしました。
これらの疑問の答えを探すように、本作視聴後に原作小説の上下巻を購読してみました。
かくして、私が心を奪われた水上のヴァイオレットや、
お気に入りの第10話が、小説では冒頭で立て続けに披露される、
大きな構成の違いに面喰らうこととなりましたがw
アニメでのヴァイオレット成長物語への違和感については、
これって結局……{netabare} アニメが原作の肝心な結末を持ち越しにしたのが
最大の原因かな?と思っています。
本作の本当の評価もまた続編次第で定まるものなのでしょう。{/netabare}
でもこうして、モヤモヤと巡り巡った挙げ句、
やはり本作には私が気が付けていない物がまだまだ眠っている
と言う結論に達してしまうのです。
加えて、考えたくないことなのですが……。
ヴァイオレットは「私は愛してるを知りたいのです」と訴えかけて来るわけですが、
私の方こそ愛を知らず、愛が不足しているのでは?とも感じてしまいますw
手紙なんて、年賀状以外では随分ご無沙汰ですし、
何よりギクリ!とさせられるのは、
ヴァイオレットが{netabare} 少佐の瞳と同じ色のブローチを求め、大事にしている件。{/netabare}
自分の胸に、身近な誰かの瞳の色を聞いてみましたが、何一つ、浮かびませんw
表現する言葉を知らないだけで、心の中が愛やら火傷やらでギッシリ詰まっている、
ヴァイオレットの心情の豊かさを前に、卑屈になってしまう自分が嫌ですw
グダグダ言っている内に、本シリーズも、
今月の外伝OVAの劇場3週間限定公開、来年初頭予定の新作劇場版と、
新展開が迫って参りました。
私としては新規エピソードを観たいという欲求以上に、
本シリーズを読み解くための新たな視点に気付きたいという想いが強いです。
幸い、今後の展開は単作の一発勝負。劇場版なら集中していける。
ささくれ立った心身に鞭打って、少しでも収穫をもぎ取って、
心に養分を補給して、チョットはマシな人間になった上で、
いつか本作の再視聴の機会を持とうと思っています。