蒼い✨️ さんの感想・評価
4.1
物語 : 4.5
作画 : 4.5
声優 : 3.0
音楽 : 4.0
キャラ : 4.5
状態:観終わった
ただの感想。
【概要】
アニメーション制作:スタジオジブリ
1995年7月15日に公開された劇場オリジナルアニメ。
原作は、漫画家・柊あおいによって『りぼん』で連載されていた少女漫画作品。
監督は近藤喜文。脚本・絵コンテ・制作プロデューサーは宮崎駿。
【あらすじ】
東京の多摩ニュータウンの集合住宅に住む中学3年生・月島雫は読書が好きな少女。
夏休みに雫は、父親が勤める図書館から借りた本の図書カードで、
どれも「天沢聖司」なる人物が先に借りていることに気づき、気のなる存在になっていた。
親友の夕子から相談があって学校に呼び出された日、
ついでに雫が高坂先生に頼んで閉館中の図書室を開けてもらい、借りた本の寄贈者も「天沢」
待ち合わせの場所に来ていなかったことで機嫌を損ねた夕子に連れられて、恋愛の相談を受ける雫。
話が終わって帰る途中、さっき一緒にいたベンチに借りた本を置きっぱなしに気づき取りに戻る。
そこには雫が知らない男子生徒がベンチに座っていて、その本を読んでいた。
【感想】
あのジブリが手掛ける少女漫画原作の恋愛物語。
自分は、このジャンルは恋愛脳でどれだけ入れ込めるか?
主人公カップルへのエモさより重要なポイントは無いと思うんだよね。
いつものジブリ調で萌えないキャラデザ。
マスコットを吊るしたりしているから皆無ではないのけど、
少女っぽさが薄い主人公の自室。そして、本でゴチャゴチャした主人公の家の中。
一般的な女子中学生ぐらいだと、りぼん・なかよし・花とゆめ等
なにかしらの漫画単行本の一冊でも転がっていようものなのに、その手の匂いは皆無。
子供を卒業したつもりであっても、学習机にシールが貼ってあったとか、
ぬいぐるみや、おもちゃのバトンなど少女の幼少期の痕跡が部屋に無い。
活字の本だらけで他には学習机と二段ベッドの質素過ぎる環境。
姉と共用の部屋で遠慮があったにしても、あまりにも華がなさすぎる。
近藤監督は生活感のある作画で定評があり、
宮崎駿・高畑勲両巨匠が争奪戦を繰り広げるほどの敏腕アニメーターらしい。
だが、アニメ版設定の雫のキャラ付けに即した部屋のレイアウトにしても、
幻想的な物語が大好きな少女の部屋のリアルさとしてはどうなんだろう?
少女漫画のアニメ化といえば佐藤順一やら馬越嘉彦やら東映系の領分だし、
そっちのほうが考えて作っていると思った。
京アニの女性スタッフなんかも少女らしさの演出や小道具にこだわったりして、
ジブリより年頃の少女の心に寄り添った作品作りになると思う。
作画にこだわりがあるジブリだからこそ、そこが気になってしまった。
女の子しか生まれてこなかったのに、このアニメでの月島家が雛祭りを祝う姿が想像できない。
今回は監督ではないと言っても制作の心臓部と言っていい宮崎駿の家庭は子供が男二人。
幼少期の記憶と、我が子らとの関わり方をベースに原作とは異なる月島家を構築してしまったがために、
ダイレクトに絵に現れてしまったのでは?と想像してしまう。
少女漫画を原作にしながらも世界名作劇場っぽい絵面で違和感があるアニメというのが序盤の印象。
家族は穏やかで影の薄い父親。専業主婦→社会人大学生に設定変更されて家庭を放置しがちな忙しい母親。
雫のお姉ちゃんなんか原作ではふんわりした優しい娘だったのに、見ててイライラするガミガミ婆。
あれ?これって本当に名作なのって疑問。雫の周りが茶色ばんだような灰色のようなくすんだ色の世界。
現実から逃避した癒やしの空間としてのアニメがジャンルとして確立してる今だからこそ、
大人は子供を躾けるもの!みたいな現実感覚を大事にする世代が作ったアニメにストレス要素が際立つのかもしれない。
理想の絵空事家族に程遠いイライラ要素に塗れた雫の家庭環境。そもそも、雫って正直可愛くない女の子。
それが、話の途中で雫が一人の少年との交流で恋を知っで思い悩むようになって可愛く見えるようになった!
世界に色がついた。後半の雫の創作の幻想世界は宮崎駿の真骨頂。
序盤のつまらなさは、二時間弱の作品世界での変化の演出として必要だったのだろうか?
後半は素晴らしかった。堰を切ったように初々しい恋愛が見れて楽しめた。
ただね、原作では純然たるボーイ・ミーツ・ガールだったのが、
このアニメ映画では大きく内容が違う。大人の視点で作られた少女の恋愛の理想。
そして加えられたのは親から子に向けたような、生きることについてのメッセージ性の強い物語。
それが強く押し出されてしまうと恋愛作品としては不純物なんだけど、
大人の優しさ・温かさ・美しさに包まれて原作よりずっと良いストーリーだから始末に悪い!
若干のストレス要素はストレスフリーな作品が多すぎな今頃の風潮に合わないかもしれない。
少女漫画なのに作りが内容がオジサン寄り過ぎる。などなどモヤモヤしたものが色々残りつつも、
背景などの映像美術の素晴らしさ、少女目線が全然足りないながらも演出能力の高さ。
これは違うんじゃね?と思いながらも、やはり名作レベルに達していると認めざるを得ない内容でした。
これにて感想を終わります。
読んで下さいまして、ありがとうございました。