なばてあ さんの感想・評価
4.6
物語 : 5.0
作画 : 3.5
声優 : 4.5
音楽 : 5.0
キャラ : 5.0
状態:観終わった
虚数の奥行きと簡略の道行き
文学的価値を徹底的に取り除くのではなく、文学的価値を微分しつくしてストーリィに混ぜ込むことで、イマっぽい「物語の零度」にたどり着いているのがあたらしい。だいたいは、文学を恐れて徹底的にその価値を除去するか、文学におもねって節操なくその価値にしなだれかかるかの二択になるのに、第三の道を開拓して突き進んでいるのが、原作の偉大なところ。
カット割りや演出も無難、作画はややきびしい。キャラ似せは問題ないけれど、日常芝居の細やかな身振りの機微はほとんど感じられない。もったいない。このすごい原作にしてこのすごい作画、・・・と言いたかった。テレビ版アニメとしては平均的なレベルだとは思うけど、あまりにもストーリィが魅力的なだけに、水準的な落差が眼についてしまう。
{netabare}とりわけラストのライブシーン。不幸なことに、バンドの演奏シーンの作画は一部の突出した作品のために(のせいで)どうしても視聴者の期待値は高止まりしている。2013年という放送当時の基準で言っても、『けいおん!』や『Angel Beats!』などはすでに放送済みだった。むろん京アニやP.A.のほうが、むしろ異常なのだと言ったほうがいいのかもだけど。 {/netabare}
このすごい原作の出来を前にすれば、そのくらいの作画の瑕疵など些事にすぎない。・・・と断言はできないけれど、でも、せいいっぱい好意的に解釈するなら、多少こざかしく動かされると、このストーリィの機微がむしろスポイルされるかもしれないのだとすれば、その意味で、無味無臭のニュートラルなふつーの作画が添えられた現状で、悪くは無いのかも。
衝撃:★★☆
独創:★★★★
洗練:★★★☆
機微:★★★★☆
余韻:★★★★☆