Ka-ZZ(★) さんの感想・評価
4.0
物語 : 4.0
作画 : 4.0
声優 : 4.0
音楽 : 4.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
手を離したら、彼女は空に落ちていく。
未視聴のまま塩漬けになっていた作品のうち、ずっと視聴が気になっていましたが、ようやく視聴に漕ぎ付くことができました。
第17回文化庁メディア芸術祭アニメーション部門優秀賞や、海外でのアニメ映画祭でも受賞歴を持つ作品のようです。
かつて、大異変が人類を襲った。そして時は流れ…。
夜明け直前の´空´を見上げる少年、エイジ。
彼の住むアイガでは、「かつて、多くの罪びとが空に落ちた」と´空´を忌み嫌う世界であった。
そこに、突然現れた´サカサマの少女´。彼女は、必死にフェンスにしがみつき、今にも´空´に落ちそうである。
彼女の名まえはパテマ。地下世界から降ってきた。
エイジが彼女を助けようと手を握った時、彼女に引っ張られるように二人は空へ飛び出した。
恐怖に慄くパテマと、想像を超える体験に驚愕するエイジ。
この奇妙な出会いこそ、封じられた<真逆の世界>の謎を解く、禁断の事件であった。
その頃、アイガの君主イザムラの元には、「サカサマ人」があらわれたとの報告が届く。
イザムラは、治安警察のジャクに捜索を命じるのだった…。
Asmik AceのHPに記載されているSTORYを引用させて頂きました。
「サカサマ」である事…私は天地や上下ががひっくり返る程度の認識しかなく、この作品の視聴を始めたのですが、この作品で取り扱う「サマサマ」の本質は私の認識を遥かに凌駕していました。
それは同一空間にいたとしても、常に重力の作用する向きが真逆なんです。
言葉で表現すると、これがどれだけ大変な事なのかが上手く伝わらないと思います。
閉鎖された空間だったら床と天井にそれぞれ自分の体重を預けられるので支障は少ないかもしれません。
でもこれが、サカサマの人が体重を預けることのできない屋外だったとしたら…?
私たちの感覚で言うと辺り一面が断崖絶壁みたいな感じで、足を踏み外したら奈落の底に一直線に落ちていくように、手を離した瞬間に空に吸い込まれるように落ちていくんです。
もし私がそんな状況に陥ったら、きっと身体が硬直して一歩も動けないかもしれません。
高い所でも私たちが普通に行ける場所は、安全マージンがたっぷり取られているので不安はありません。
ですが、この物語における安全装置は、自分の手で縋ることしかないんです。
人間なんて間違える生き物ですし、ずっとしがみ付いている訳にもいきません。
土台、自分の手なんて安全装置の代わりには成り得ませんので…
一方、物語の方ですがエイジたちの暮らすアイガは、ルールと規則で雁字搦めにされた世の中でした。
確かにルールや規則を逸脱すると、命に危険が及ぶ場合があるので蔑ろにはできません。
ですが、抑圧もやり過ぎれば毒も成り得るので、一番大切なのはバランスだと思うのですけどね。
例えば、空を見上げるだけで怒られるんですよ。
もう何が何だか…
でも、物語の視聴を進めていくうち、そうせざるを得ない事情も呑み込めてくるのですが、一部のガイア人がサマサマの人を異様なまでに忌み嫌う言動は、正直見ていてあまり気持ちの良いモノではありませんでした。
それだけじゃありません…相当残酷だったとも思います。
これはパテマとエイジの運命の物語…
辛かったこと、怖かったことは一度や二度じゃありませんでした。
お互い何度も落ちそうになり…その度に支え合ってきました。
そして二人の行く末で待っていたのは…この世の真実でした。
このスリリングなサカサマの世界…気になる方は是非本編でご確認頂ければと思います。
上映時間が約100分程度の作品でした。
僅か100分の中で物語は綺麗に纏まっていたと思います。
この作品のジャケットのイラストが印象的…しっかり物語の世界観を表現していると思います。
しっかり堪能させて頂きました。