みかんとラッパ さんの感想・評価
4.2
物語 : 4.0
作画 : 5.0
声優 : 4.0
音楽 : 3.5
キャラ : 4.5
状態:観終わった
『噂の眞相』
もともと「人間にそこまで関心のなかった(本人談)」新海誠が,
奥さんと出会い,キャラデザの田中さんの参加,
そして川村元気の参入を経て,
しだいに「脱童貞」な路線へと切替えたことで
「君の名は」の大ヒットがあり,
その名が広く知れ渡ったことでスポンサーも増え
本作品を見た当初は「言の葉の庭」を劇場で見たころとは全く違う
感動がありました.
「彼女と彼女の猫」のころをふりかえると,本作品の
{netabare}どん兵衛のCMソング{/netabare}のシーンを見ただけで
もう泣けてしまいます.
ご存知の方も多いと思いますが,
前作の「君の名は」では新海誠の描いたネームに
奥さんがすべてセリフを吹き込んで,そこから製作が始まっています.
(参照:NHK製作「Switchインタビュー」より)
高校では演劇部部長,
早稲田文学部と東大大学院を出た奥さん(A型)の演出が反映されてこその
「君の名は」だったような気がします.
調べるとたくさん出てきますが,
その新海誠の奥さんがかつて記者としてアルバイトをしていたのが
雑誌「噂の眞相」の編集部でした.
政治家や文豪のスキャンダル,オウム真理教のような新興宗教や
オカルトまで
まさに本作品の主人公たちのようなことをやっていたわけです.
そしてこの「噂の眞相」が掲げた反権力・反官学的な社是と共通して,
本作品にはあらゆる記号が「反権力」の象徴として登場します.
売春・拳銃・・・
一方で若者を取り巻く環境は
前作「君の名は」の『パンケーキ』から
本作品では『ビッグマック』と『ネットカフェ』へと
変化を遂げています.
「雲の向こう~」でも「大人社会への抵抗」があり,
前作でも「大人たちへの反抗」が「変電所の爆破」として描かれました.
そして本作品では…
劇場版パンフレットの中で新海誠は
「若者たちが圧倒的に貧しくなってきている」と発言しています.
そういう現状に満足してるのか??
こういう観点から「反権力」をキーワードに
まさにある意味「開き直った」結末があえて用意されているのです.
ただただ,「新海ワールド」に見とれるだけではいけないのです.
特に主人公たちと同世代の方たちは.
かつての三島由紀夫のような
若者への訴えと
最近のドラえもんにも反映されている
川村元気のような『「世界」への抵抗』.
個人的にはイイタイコトを放出しきったエクスタシーの後,
「やっぱり童貞」な新海誠は
「虚無感」の溢れる世界に帰ってくる気がしてなりません.
「やっぱり,人間って何を言っても変わらないですし…」
「その矛盾に気づいちゃったんですよね…」
「やっぱり雲を描くだけの人でいたいです」
なんて言い出したりして.