なばてあ さんの感想・評価
4.8
物語 : 4.5
作画 : 5.0
声優 : 5.0
音楽 : 5.0
キャラ : 4.5
状態:観終わった
リテラルとシャープと入れ子状と
古典。エポックメイキングをリテラルに成し遂げた作品だけど、2019年現在はそれを歴史化できる(せざるをえない)距離を確保できてもいる。
当時自分が感じていた嫌悪感をできるだけ中和して、ニュートラルに観てみると、案外楽しめてびっくりした。「エヴァヲタの荒い鼻息」さえ括弧に入れてしまえば、すごい名作なのだと腑に落ちる。いまでも、この庵野さんの「濃密な質感」は唯一無二だと思う。あれだけフォロワがいたのに、この「質感」だけはトレースするのがむずかしいのだろうか、もしくはこの「質感」だけはトレースしてやるものかとこだわられていたのだろうか(半々だろう)。
カット割りのシャープさと劇伴のマッチングは空前絶後。エヴァと使徒のバトルシーンの量感もまったく古びていない。わたしが敬愛してやまない磯光雄パートの素晴らしさは言うに及ばず。個人的には悪名高い(らしい)ジブリ回の第拾壱話が好み。シナリオが秀逸で「怪獣が出てこない特撮番組」的な味わい深さ。くだんのラスト二話は、いまとなってみれば、わりとノーマルに受け止められる気がする。
制作スケジュールの逼迫というアニメにおいてなによりもリアリティのある現実の証言は、この作品の「生」そのものと言って差し支えない。表現というのは入れ子状に多層的に成立している。だのに、作品の「意義」を、ひとつの「意味」やシンジ君の「アイデンティティ」のみに収斂させるのは、幼稚で短絡的な「最終解決」でしかない。とはいえ、作品がメタに獲得した批評性に着目せざるをえないという不自由さは否めないのだけれど。
ともあれ、たしかに一時代を築いた作品。それでも、このあとに続いた作品群がこの作品のポテンシャルのすべてを汲みつくしたかというと、それははなはだ怪しい。それは、「エヴァヲタ」を筆頭にした当時の視聴者の罪というべきではないだろうか。もちろん、長らくこの作品から眼を背け続けてきた、わたしもそれを免れないのだけれど。
衝撃:★★★★★
独創:★★★★☆
洗練:★★★★
機微:★★☆
余韻:★★★★★