退会済のユーザー さんの感想・評価
4.2
物語 : 4.0
作画 : 4.0
声優 : 4.0
音楽 : 4.0
キャラ : 5.0
状態:観終わった
神の見えざる手
久々に鳥肌が立った作品です。
美しき幼い少女『ターニャ・フォン・デグレチャフ』。
彼女が見せる勝利への執着と恐ろしく悍ましいその素顔は、クリエーターの
優れたセンスを感じます。
市場原理主義の塊であった日本のサラリーマンが死後転生をしたターニャ。
親を失い、貧しい生活を脱し生き抜くために帝国軍への入隊を志願。しかし
前線から離れた安全な部隊への配属の望みとは裏腹に、隊の最前線に駆り出
されていくことに。
神への信仰を真向から否定し、市場原理を信じ自身が思う合理性を描く彼女。
優れた才能を発揮し、そして巧妙に徹底的に敵に立ち向かい、やがて軍の
上級階層へと邁進して行く姿の恐ろしさ。
彼女の口から発する可愛らしくも毒々しく、そして堅く鋭い上級官僚として
の台詞。異世界ながら現実的で巧みな戦争描写に、ただただ驚くばかりです。
帝国が持つ徹底した合理主義は、数多くの憎悪を生み出し、いつしか争いの
分子と火種を作り出すもの。
非合理である平和主義は、争いを望まずと語りながら正義と称し目的をすり
替え争う。そして行き過ぎた平和主義は、争いが起きた後の行動は決して示
さず、絶えず無責任な主張を訴え続けるだけ。
それぞれの正義・思想が世の中の大勢を占めたとしても、人は争うという性
からは決して逃れられない。今もどこかで大国が裏に潜み、他の人種を忌み
嫌い、常に一触即発な外交状況である現実がそれを物語っています。
かつて合理性を突き進み崩壊していったドイツ帝国の歴史を知る彼女は、こ
の時代をどう立ち振る舞い、そして神に抗い続け、どう生き抜くのか。
今直ぐにでも結末を見てみたい、興味の尽きない作品です。