ダリア さんの感想・評価
5.0
物語 : 5.0
作画 : 5.0
声優 : 5.0
音楽 : 5.0
キャラ : 5.0
状態:観終わった
ねえ、もうすぐ晴れるよ
☆エンタメ路線
君の名は、から新海誠は完全に一般向けに舵を切っていて、それが狙い過ぎてないレベルなので見事だと思います。
本来の新海誠の作風は秒速5センチメートルに代表される言語化できない感情の機微の映像化。
世界観は雲の向こう、約束の場所という過去作に似たセカイ系ですが、こちらの方が遥かに一般層を視野に入れた作りで、そのバランスがお上手です。
私は言の葉の庭が一番好みで、新海誠はああいった作風のものはもう二度と描かないんだろうなと感じました。
それでもしっかり面白かったのが悔しいばかり。
☆圧倒的な背景美術
秒速5センチメートルの頃から随分話題にされてますが、新海誠作品の背景美術は本当に美しい。
瑞々しく息遣いさえ感じられるような街並み、雲間から東京の街に差し込む一筋の光明は幻想的で、当たり前の風景を鮮やかに切り取る事に関して天才的だと毎度思います。
新海誠作品を観るとしばらくはなんでもない普通の街並みをより慈しむ眼差しで見つめられるような気がします。夕焼けに染まる街並みとか。
興味ない方は本当に興味ないでしょうけど、わざわざCGのモデルに一枚一枚手描きでライティングを加えて手描きの風景に大して違和感がないように(CGの質感が世界観から浮かないように)溶け込ますらしいです。
アホみたいに手間が掛かる工程を加えるぐらいに、幻想的な風景に大して変態的な拘りがある方です、新海誠は。神は細部に宿る。
☆劇伴
君の名は。に続いて劇伴の使い方が丁寧すぎる。
緩急が本当に素晴らしくて、盛り上がるべき場所で切り札のようにRADWIMPSと今回の秘密兵器三浦透子が歌います。
そして、次のセリフまでの一瞬の静寂。
この無音によって視聴者は次のセリフに惹き込まれるわけです。お見事。
君の名は。の時はそんなに気にならなかった気しますが、自分の感想見たらしっかり言及してました。
思えば言の葉の庭のラストシーン辺りから劇伴の使い方上手いなーと思って調べたら、丁度その頃天門先生と組むの辞めたみたいですね。
天門先生には悪いけど、RADと組むようになってから新海映画の音楽がグッと良くなってる。
今回RADWIMPS野田君は前作以上に制作の深い所に足を突っ込んでるらしくて、音楽関係のほぼ全ての監督を担ってるらしいです。
そんな野田君が1年にも及ぶオーディションの末に見つけた天才が、三浦透子。
祝祭とグランドエスケープにボーカルを入れた女性です。
透き通るようなクリアボイス、けれど雨を吹き飛ばすような力強さもあって、爽やかな挿入歌だったと思います。
調べたら弱冠22歳の北海道の女優らしいです。いやどう考えても貴方の天職は歌でしょ。是非メジャーデビューして欲しい。
後の内容は全部ネタバレです。申し訳ない。
{netabare}
☆展開について
言及しすぎて完全に話題が逸れたので別の所に投稿した文章ですが、2000年代のエロゲじゃんって感じです。既視感の正体は多分ソレ。エルフ倒産したらしいよ。ランスシリーズ続編もう出ないって。麻枝准って今何してんの?
新海誠が
今はものすごい勢いで作品が増えている。その中でオリジナルは探りようがない気がしている。誰もが見たこともない映像表現が自分にできると思ったことは全くない。
仮に既存のものと重なるビジュアル表現だったとしても、せりふや音楽、メッセージと組み合わせることによって、鳥肌を立たせられるような瞬間はまだまだ作れる。どちらかと言うと、僕の仕事はそっちかなと思っています。
と語っていて、この人はこのエロゲらしさもどこかで観たという既視感も狙って生み出してるんだなと感じました。まあ元々minoriブランドでエロゲのOP描いてたからね。エロゲみたいなシナリオの引き出しにはなるでしょ。天門先生ともminoriブランドからの付き合いだったし。
君の名は。の2人のゲスト出演については、言の葉の庭の先生みたいなもんなんで想定内。
君の名は。と地続きの世界観だと瀧君はまだ三葉と出会ってなくて、お互いにお互いを捜してる状態らしいです。
ショップ店員の三葉が組紐を髪飾りにしてるのはグっときました。
3年して街が水没後に瀧君の祖母を訪ねるシーン、小説版にはお婆さんの孫の結婚写真が飾られている描写があるらしいので、瀧君と三葉ちゃんは2021年から2014年の間に結婚確定です。おめでとう。
よく考えたら2021年の夏に陽菜が世界に戻ってきて雨が降り止まなくなってから、2022年に瀧君と三葉が再開する時に雨止んで晴れてない?という話になり普通に矛盾しますが、まあ細かい事は良くない?
平泉成っぽい警官のキャストが平泉成で普通に笑いました。よく出てくれたな。
あやねちゃんとかなちゃんはそのまんま声優の下の名前じゃん。
気付かなかったけどこの小ネタスカウトマンでもやってるらしくて、序盤で帆高君殴って銃口向けられた妻子持ちのスカウトマン木村、木村良平君がやってるんですよね。ヨシュア……すばらしきこのせかいの続編早く作って欲しい。
こわい警官が梶裕貴でびっくりしました。どちらかと言うと演じ分けできない声質一本で戦ってる演技が一辺倒の声優だと思ってたので、スタッフロールで本当に驚きました。結婚おめでとう。
さりげなくスタッフロールの声優欄の一番下の方に羽鳥慎一が。どこのニュースで声録ててたんだ。
☆ラストシーンについて
観終わった後調べていて、え、むしろあれで賛否あるのかといった感じでした。割と落しどころとしてこれ以上なくないですか。
君の名は。のラストシーンが秒速5センチメートルのラストシーンのセルフリメイクであると感じたように、今作のラストも言の葉の庭のラストシーンのセルフリメイクに感じましたね。
もう奇跡も無いのに、階段の踊り場を駆け上がって(実際には階段なんて無く、言の葉の庭のセルフリメイク的な意味合い)
今度は2人で大丈夫って言いたいから、名前を呼びます。
あれだけ荒唐無稽な事を沢山繰り広げてきて、あえて何も特別じゃなくなった等身大の少年少女が2人手を取るというラスト。
日常の美しさを切り取る新海誠らしい、秀逸な幕の引き方ではないでしょうか。
{/netabare}