STONE さんの感想・評価
4.5
物語 : 4.5
作画 : 4.0
声優 : 5.0
音楽 : 4.0
キャラ : 5.0
状態:観終わった
ジョジョ流、ギャングウォー
原作は既読だが、相当前に読んだのでいい具合に内容を忘れており、新鮮な気分で視聴できた。
本作に当たる5部の漫画に関しては他の部に較べてそれほど面白い印象がなかったが、本作は
「こんなに面白かったっけ?」と思うことが多々。
これ自体はあくまで自分の感覚だけど、それは別にしても映像、音楽、演技、演出、アニオリの
内容など総じて良いアニメ化だったと思う。
本作はイタリアが舞台の裏社会ものということで、かなり殺伐とした印象が強い。
主人公であるジョルノ・ジョバァーナやチームリーダーのブローノ・ブチャラティの持つ
正義感はさておき、客観的には犯罪組織の内部抗争による殺し合いを描いたもので、対人間が
メインになった3部以降では一番キャラの死亡率が高かったんじゃないかと。
3部も主人公サイドの犠牲は本作に負けず劣らず多かったけど、主人公サイドがここまで
意図的に敵スタンド使いを殺害していく流れではなかった。
また単に死亡率が高いだけでなく、敵も味方も物事を暴力で解決していくという展開のために
全体的にバイオレンス色が強い。
他にも前述の正義感に関して言えば、子供に麻薬を売ることには嫌悪感があるようだが、全ての
犯罪を否定しているわけではないようで、主人公にモラルを求めるようなタイプの人には
受け入れ難い内容かも。
個人的にはマフィアものややくざものは結構好きだったりするので、かなり楽しめたけど。
前半はボスの命令、後半はボスへの裏切りと立場がガラッと変わるとはいえ、基本的には
ブチャラティチームの集団闘争を描いたもので、元々ジョジョシリーズはグループバトル色が強い
印象があるが、本作はこれまで以上に主人公以外のチームメンバーが活躍している感が強い。
各エピソードの山場は1対1の決闘のようになることが多く、それがよりそれぞれを
その場での主人公にしている感があった。
特にブチャラティはストーリー展開からしても第二の主人公といった趣きがあったが、逆に
言えばジョルノ自身は仲間に対するサポート役が多かったせいか、これまでのジョジョに
較べても、やや影が薄かったかも。
ブチャラティチームではパンナコッタ・フーゴがボスへの裏切りに同調できずに途中離脱。
後で敵として登場するとか、ブチャラティチームの窮地に助けに現れるとか、なんらかの
再登場があるかと思っていたら、本当に何もなかったのには驚いた。
ただフーゴ以外が選択したボスへの裏切りがギャングとしていかにとんでもない選択で
あるかを示すために、本来のギャングとしての正しい選択としてフーゴの選択を描くのは、
演出として大きな効果を上げていたようにも思える。
まあメタ的にはスタンドのパープル・ヘイズが本体も制御しきれない暴走型ということで、
原作者の荒木 飛呂彦氏が扱いに困ったというのもあったのかも。
イタリア国内とは言え、ブチャラティチームの旅を描いたロードムービースタイルに
なっており、そういう点では3部に似たテイストかなと。
この旅だが、最終目的()に至るためのサブイベントの積み重ねといった感じで、流れ自体は
RPGに似た印象。
スタンドバトルはより凝ったものになってきている感がある。
この辺は既出のスタンド能力とは異なったものを出さざるを得ないために、能力が
複雑化するというメタ的な事情があるのだろうし、荒木 飛呂彦氏がシンプルな肉弾戦より
頭脳戦を好むような印象があるが、いずれにしても能力そのものの優劣以上にその使い方が
勝敗を左右していく流れが強くなっていて、より面白みを感じる。
レオーネ・アバッキオの死に際しての同僚との再会?、最終話の過去描写に当たる
「眠れる奴隷」に象徴されるように随所に「運命は変えられないが、それゆえに結果より
どう生きたかという過程こそが大切」といった感じのテーマ性が感じられたが、他作品の多くが
己の行動で運命を変えていこうとする中、この考え方は結構面白い。
荒木氏の考え方だと、「変えられる運命は運命ではない」、あるいは「変えられる結果を
含めての運命」ということになるのかな?。
このテーマ性を考えるとラスボスであるディアボロのスタンド キング・クリムゾンの能力や、
ジョルノの進化したスタンド ゴールド・エクスペリエンス・レクイエムの能力も「テーマ性に
則したものかな」という感があるし、バトルものとしてはやや地味な印象があった終盤もテーマを
表現するという点においてはかなりしっくりくるもの。
思えば1部のウィル・A・ツェペリの最後の行動も自分が死ぬ運命にあることを知りながらの
ものであり、このテーマはジョジョシリーズ全体を貫くものなのかな。
モダンホラー、サイコホラー要素の強かった4部ほどではないが、それでも随所にホラー的が
演出がなされ、これが緊張感を高めるのに非常に役立っていた感があった。
2019/08/08
2019/08/16 誤字修正
2022/08/02 加筆・修正