mumumu さんの感想・評価
3.8
物語 : 3.0
作画 : 4.0
声優 : 4.5
音楽 : 4.5
キャラ : 3.0
状態:観終わった
泣き虫なのは誰だ誰だ
ネットで原作信者とリメイクファンによるアーマゲドン並みに醜い争いを見て中々手が出せなかったが
電グルのOPとアレンジ版デビルマンの歌を聴いてしまい、あの疾走感にあてられ我慢できなくなりNetflixへ加入。
結果、原作ファンはアンチ化するという前評判を見事に裏切られた。
湯浅監督については四畳半での匠なアレンジ力、ケモノヅメのあのもう二度と見たくない陰惨さが永井作品と合うだろうと踏んでいたものの、良くここまで50年前のあの泥臭い作風をこざっぱりさせ且つ湯浅ワールドへ落とし込んだなと感心した。過激な描写もライト&ポップで、サクサク一気見することが出来た。
一応、マイナス&プラス点を整理しておく。以下ネタバレ
<マイナス>
・原作にはなかったミーコや牧村家族への掘り下げは良かったのだが、カメラマンの長崎や陸上スターの幸田というオリキャラの扱いが雑だったのでは…と。
特に恋人を喰ってしまい苦悩する幸田の描写は勿体なかったので、それをミーコとその彼氏のエピソードにすれば良かったのに
・シレーヌとジンメンが弱い。
尺の関係上かもしれないが、強敵としてもっと良いバトルを期待してしまった。
ここは非の打ち所のないOVA版が既存だし仕方がないかな…でもシレーヌのオ◯ニーと空中プレーはとても良かったよ!
<プラス>
・ラップの投入はけっこう好きかもしれない。素人目にも名だたるラッパーがキャスティングされてるのがわかるし、言葉選びもインテリジェントで、演技も悪くなくひたすら好印象。音楽に力を入れていることも高評価、場面場面での曲の入りが兎に角かっこいい。
・昨今の若手声優は声が綺麗すぎると揶揄していたが、本当に侮り難し。
主役の内山さんの血を吐くような熱演をはじめ、了の中の人には本来の性別がどちらなのか惑わされたし、潘めぐみなんて今まで親の七光りだと思っていたことを心底恥じた。彼女の最期の絶叫には拍手を贈りたい。
最後に、避けては通れないトラウマ展開(主に第9話)について言及したい。
今回のリメイク化について完璧!と手放しで称賛はしないが、私はある点において今作の意図に共感してしまい非難できなくなってしまった。
その意図とは
「この物語に絶望し傷ついた、かつての自分への救済」ではないかと思っている。
原作版の終盤は打ち切りが決定していたため怒涛の超コンボで息をつく間も無く地獄へ叩き落とされる。
初めて読んだ時はあまりの衝撃で混乱しパンク状態に陥ったのを覚えている。
結果、人間こそが悪魔であるという性悪説にフォローを入れる余地すらなく読後はもれなく人間不信に陥るのだ。
そこで今作では愛をテーマとし、人間の善性が補われている。9話途中の唐突とも思えるフリーハグのくだりはパリ同時多発テロの後にあった実話を元にしているし、美樹のSNS投稿のくだりを含め、ドキュメンタリーのようなリアルな人間の善良さを再現することで必ずしも絶対悪ではないという救いの手を加えている。
また、ヒロインの聖女化もその一つで
敬虔なクリスチャンであること、周囲からもカリスマ視されていることで神聖度を増している。
原作の美樹ちゃんはコメディリリーフを担い、明とのラブコメは日常での癒しとなっていたことから、不可侵となるべき存在の女の子への最悪な仕打ちに、より不条理を感じるのだが
リメイク版でのヒロインは慈愛と博愛のもと全てを受け入れる度量を持つ聖女像のため、この処刑も人々の苦しみや断罪をひとえに引き受けた救世主のような印象さえ受ける。
そして原作内で1番のトラウマとなっている
美樹ちゃんが生きたまま嬲られ続け、最期の最期まで恐怖と苦痛を負わされたであろう描写に対し
子ども心に何度も「せめて、あんな目に合う前に生き絶えていたらまだマシだったのに…」の嘆いたものだ。
その幼い頃の私の想いがリメイク版ヒロインの絶命シーンでリンクすることになる。
「あの刺し傷の深さなら、すぐ事切れたに違いない!よかった!よかった…!」
それを証明するかのように、生首と化した美樹ちゃんの死に顔は絶望に歪む原作とは違い、深い哀しみをたたえながらもどこか明に対して(もしくは人類に対して)許しを与えるような神聖さを感じた。
今回、初デビルマンがcry babyだった方の中にはトラウマを与えられ鬱になった人もいるだろう。しかし、大昔に漫画版によりトラウマを受けた自分にとってはcry babyに救われるような思いがしたのだ。
つまり、このリメイクは監督による監督のための
かつてデビルマンを読み絶望し、泣きじゃくることしか出来なかった少年少女たちへ差し伸べられた、なぐさめの物語なのではないかと私は捉えている。
自分都合な妄想解釈だが、少しながら感謝の念を抱き、また更にデビルマンが好きになった。