aqua さんの感想・評価
4.3
物語 : 4.5
作画 : 5.0
声優 : 3.5
音楽 : 4.0
キャラ : 4.5
状態:観終わった
平成ではなく令和アニメ
彼は平成を生きた人間であり、ほしのこえから始まった作品群、つまりゼロ年代のアニメを経験、および自ら作り出していたクリエイターです。
前回の作品である「君の名は」において、セカイ系ではなく中間項を内包した作品であるものの、「世界」と「君」の妥協点、もしくはある種同一となる答えが存在する世界を描いたことに対し、今回はセカイ系との決別を果たしています。
いや決別という言い方も少し語弊があるかと思います。
ゼロ年代アニメへのアンチテーゼとも言いましょうか、平成から令和への時代のシフトを表現しているのか、そういったことを感じました。
特に今作は世界と巫女、社会と個人をあえてしっかりと切り離し、トレードオフの関係にまでさせました。
彼自身の思考がどう変化したのかはわかりません。
自身が何かしらに抗おうとしつつ、原点に回帰し始めていると感じています。
私は「ほしのこえ」が大好きです。
たった25分のアニメですが、何度も見ました。
私は彼が「ほしのこえ」では出来なかった、人間があるべき姿ではなく、ありたい姿、許容されるべき姿という物を表現するにあたり、当たり障りのないやり方でなく、真っ向から描き始めているのだと、しみじみ感じました。
おそらく単体で見た場合、雨の映像美を見る作品に近くなるでしょう。
美しさや表現力に関して文句はありませんが、彼はそこをしっかり描いた作品を既に出しております。
「雨」においては「言の葉の庭」の方が上だと感じます。
ですので結果として評価が下がるのは仕方のない事でしょう。
ただこの作品の注目すべきはクリエイターとしての変化、そして哲学。
新海誠をかれこれ15年以上追ってきた人間として、それこそが最も楽しめるのではないかなと思います。
少し文句があるとすれば、本田翼ですね。
君の名はの長澤まさみ、今作では平泉成と小栗旬。
この方々が専門ではないにもかかわらず、非常に良い演技、そして全体としてはアクセントになっていましたが、彼女だけは少し浮いていました。
表現力ということもありますが、何より彼女自身の素の声としか感じず、本人を演じているのかな?とも感じてしまいました。
また、次作はRADを使わない表現で行って欲しい。
君の名はもそうですが、声の癖が強いせいか浮いてしまう。
映像から意識が一瞬離れることが多く、正直見ていて疲れます笑
良い歌手なんですけどね、すこし新海作品向けではないのではないかな。
{netabare} あまり評価していない人は世界の為に個人が犠牲になれというのを全肯定するタイプの人が多そうですね。
それ自体は否定しませんが、そういう時代は平成までで終わりですね。
自己犠牲は素晴らしいものですが、それを選ぶかどうかは個人次第であり、その選択自体責められるべきものではない。 {/netabare}