ilohasu さんの感想・評価
4.5
物語 : 4.5
作画 : 4.5
声優 : 4.5
音楽 : 4.5
キャラ : 4.5
状態:観終わった
消滅する事で動態を規定するシステムってなに?
ストーリーはシンプルだと思いますが、台詞が衒学的で何度頭を悩ませた事か、、、
一番理解出来なかったのが、最終話でのアオイと素子の会話劇で、理論社会学者 大澤真幸先生の引用箇所。
『消滅する事で動態を規定し、システムの外側にも内側にも痕跡をとどめない』
正直なに言ってんのかさっぱり。。
気になって仕方が無かったので、『システムの生成』(大澤真幸著)という本を買って読みました。(後に知ったのですが、『愛と性愛の資本主義』からの引用みたいですね。ですがシステムの生成でも同じ文章がありました)
読んでみて思ったのは、SACのストーリーと関連性を見出すのが素人の自分には難しい議論だと思いました。
正確さを欠いた意訳で恐縮ですが、端的にあえて言うと、
マックスウェーバーの議論で有名な、資本主義の成り立ちには予定説に影響をうけたプロテスタントの価値観(天国に行くために、禁欲しながらのお金儲けはスンバラシイ☆と思い込む)が根底にあり、それが次第に資本主義の発達によって皮肉にも宗教的な信仰心を人々の意識から排除してしまい、当初のお金儲けの信仰心だけが人々の無意識に宿って今の資本主義は駆動していると。
”つまりプロテスタントが資本主義を生みだし、資本主義が内にあるプロテスタンティズムを消し去ってしまった。 残ったのはお金儲けの為にお金儲けする、ある意味で倒錯した資本主義。もうプロテスタンティズムの面影はどこにもない。。。。orz”
もうジジェクおじさん激おこ!
その資本主義の流れがレビィストロースの神話分析で有名な数式と同型であると主張したのがフレデリックジェイムソン。 さらにそれを社会システム論の文脈で捉え直したのが大澤真幸さんの上記の引用箇所だと思います。(間違ってたらごめんなさい)
(*そもそも社会システム論って何だ?、、僕なりの解釈になりますが、身近な例で言うとコンサートの一体感とか不文律、当たり前や常識、時代や場の空気みたいな社会の秩序全般をシステムとして捉える理論かなと)
そーいえば『オリジナルの不在がオリジナルなきコピーを生みだす』 これってボードリヤールのシミュラークルの概念かなと思ったのですが、どうなんでしょ。。
あえて上記の議論を形式的にSACに当てはめて考えてみると、、、プロテスタントがアオイで倒錯した資本主義に内在するのが模倣者達に当たるのでしょうか。
つまりアオイの振る舞いがアオイを神聖視した勘違い模倣者達を生みだし、勘違い模倣者達がアオイを引き篭もりに追いやった。残ったのは自分らしさに不安がある神経症的な爆走模倣者達。もうアオイの本来の意図はどこにもない。。的な、
んーこの捉え方自体が勘違いかも笑
正直この解釈に自信がありませんが、仮に現代社会に当てはめると。宮台真司先生がボロクソに言う(笑)クソフェミやパヨク、ウヨ豚の事でしょうか?
もしそうだとしたらグローバル化によって中産階級が崩壊&地域の暖かい繋がり共同体が解体、経済界にマクドナルドみたいなマニュアル化の導入で個人が入れ替え可能な経済の部品化→多くの人が心細い病み闇独りぼっち化で噴出する不安。
それによってやたら特定の意見に依拠して我こそは正しい!とマウント取りたがる人。SNSで虚栄を張ってイイネ集めに奔走する人。。。等が跋扈する社会。
これは社会のメカニズムとして必然的、そこから抜け出すのは社会や自分の常識とは違う他者に好奇心を持つ事、これが攻殻機動隊SACの寓意(メッセージ)なのかもしれませんね。