かがみ さんの感想・評価
4.3
物語 : 4.0
作画 : 4.5
声優 : 4.5
音楽 : 4.0
キャラ : 4.5
状態:観終わった
日常系におけるひとつの頂点
ゼロ年代以降のサブカルチャー文化圏において「セカイ系」と「サヴァイブ系」を止揚するような形で現れたのが「日常系」という想像力であり、そこで強調されたのは「ここではない、どこか」目指すのではなく「いま、ここ」をより豊かに彩っていくという青春観であった。こうした日常系におけるひとつの頂点に位置するのが本作である。放課後ティータイムはロックという音楽がかつて内包していた「意味」を全て剥ぎ取り、あくまでこの日常を祝福するために歌う。象徴的なのは17話だろう。部室が使えなかったり、憂が風邪をひいたりするという出来事を通じて唯は「当たり前」がいかに大切なものであるかを思い知る。結果、放課後ティータイム後期を象徴する2つの名曲が産み出された。本作は日常系における「いま、ここ」というコンサマトリーな感覚に徹底して寄り添った作品である。社会学者の見田宗介が言うように現代的成熟とはまさにコンサマトリーな幸福感受性の涵養にある。過去に囚われるのでもなく、未来に生のリアリティを先送りするのでもなく、文字通りの「いま、ここ」により深く潜ることで、ありきたりな日常の風景の中にも、いくらでも瑞やかな歓びを汲み出していけるのである。