「聲の形(アニメ映画)」

総合得点
88.4
感想・評価
1521
棚に入れた
7489
ランキング
115
★★★★★ 4.1 (1521)
物語
4.2
作画
4.3
声優
4.2
音楽
3.9
キャラ
4.1

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ネタバレ

ofAFF98719 さんの感想・評価

★★★★★ 5.0
物語 : 5.0 作画 : 5.0 声優 : 5.0 音楽 : 5.0 キャラ : 5.0 状態:観終わった

硝子の考えを知ることが作品の理解ができる鍵

映画→原作と言う順で見ました。また、映画はあまりにも情報量が多かったこと、各場面の解釈を図ったため10回近く見るハメになりました(誉め言葉)

この作品の批判として「硝子みたいな人はあり得ない」「いじめっこに都合の良い話」など色々有りますが硝子がどんなことを考えていたか?を理解すれば彼女がなぜ将也を受け入れたか見えてきますし、硝子も天使のようだと言う考えも変わるかと

まず硝子の考えを知る第1の起点として、硝子が将也と友達になった理由ですが彼女の願いは「ノートを通して友達を作ること」です。
それはかつて将也に壊された願いでもありました(将也がノートを池に投げ入れたシーン)
しかし、5年越しにノートをもって現れた将也により図らずしも叶ってしまいました。

また、彼女を虐めていたのは将也や水門小のクラスだけでなく、転校前の学校で虐められていたと思われる描写も映画内できちんと描かれています(2回目以降見ると分かりやすいですがオープニング(The whoのMy Generationが流れるシーン)で川に落ちたか入ったか?までは不明ですが汚れた硝子が出ています

加えて彼女には将也と言う友達ができるまで友達が居なかったならば砂漠で出された水のように、それを受け入れてしまったのも、とても気持ちがわかります

第2に結絃に妨害されても無事に会えた二人のやり取りは将也側としてみると、とても不可解なやり取りがあります
将也の「君に合う理由を探してた。昔のこととか、しょっちゅう思い出しちゃうし」に対し硝子は「私も同じこと考えてた」と
硝子の言葉の意味は「将也は自分のせいでいじめられてしまった」と言う自己の加害者意識です
映画内では、余り語られていませんが(逆に原作だと明確です)硝子は自分の家族も含め色んな物を壊してきたと思っています
前述の将也へのいじめ(だから小学校で将也の机を拭いてました)や親の離婚、妹が虐められるる、水門小のクラスを壊す、高校生の将也が友達に絶縁されるなど…親の離婚や結絃のいじめは映画で描かれてないので反映されてるかは不明ですが
将也が怪獣のバラードで硝子の平和を乱す怪獣として描かれたように硝子もまた、様々な物を壊した怪獣だったと自己を考えていたのでしょう
だからこそ、天命反転地公園で「私と関わると、あなたが不幸になる」と将也に述べたかと
そして硝子は究極の自己否定として自殺を選びました。

第3の起点として彼女はなぜ自殺を選んだのか? 硝子は病院を抜け出した将也と再開した際に述べた言葉にヒントがあります。
「私が居なくなればって」…居なくなるだけならば街から出るだけでも良いハズです。でも彼女は自殺を選びました。

硝子は自殺時も自分は色んな物を壊す怪獣だと言う意識があったのでしょう。そして、これから行く先々でも自分は何かを壊すと…だからこそ行き先なんてなかった…
また、障害者を助けると言う健常者の親切心もまた彼女に呪いをもたらすような結果を起こしました
(上野さんに負担をかけて佐原さんは虐められて、妹は硝子を守るために男装したり…etc)
そのため自殺で「居なくなること」を選んだのだと思われます
なお自殺は臨床心理学で有名なフロイト曰く「攻撃性を他者に向けるのではなく自分に向ける行為」とのことで彼女も方向性が違えば誰かを傷つけるだろうし、結絃が家出するくらい酷いことを言いました。また、原作では年頃の女の子が口にするにはちょっとキツい下ネタじみた話も理解できてます。
家ではケーキを食べてるシーンで普通に笑ってたりドヤ顔してたりします。佐原さんの前でも笑ってましたし他人との接し方も心を開ける相手には普通の女の子って感じです。

そんな硝子が前向きになる大きなキッカケは「君に生きるのを手伝って欲しい」と言われたことでした。
少し差別的な書きますが、障害者に助けてもらうってことを考えたことのある健常者って世の中にどのくらい居るのだろう? 現に私は聲の形を見るまで考えたことすらありませんでした。
そして、上野さんに小学校で補助してもらったり、将也に友達の輪を広げてもらったりと自分では何もできない、迷惑をかけ壊す存在と自分を評価していた硝子です。そんな彼女を必要としてくれる(生きるのを手伝って欲しいと言う以前の将也は依存として硝子を必要としている部分が大きかった)どころか「生きるのを手伝って欲しい」と言ってくれる。きっとそれは彼女が初めて聞いた言葉だと思います(西宮母やおばあちゃん、結絃も当然ながら硝子は必要以上に大切な相手です。ですが、それをうまく伝えられてないのが作品のテーマ「ディスコミュニケーション」)
恋い焦がれた相手にそんなことを言われる…そりや「たった1つの道標」になるわけです

今回、硝子にフォーカスして文章作りました。なお、故西屋氏曰く「見るたびに新しい発見のある作品」とのことですが、私が10回近く見たのもそれが理由でした。「エンディングの『恋をしたのは』は恋愛の映画じゃ無いのになぜ主題歌?」と当初私は考えてましたが演出の意図が解ればしっくり来ます。
そんな奥深い映画です

投稿 : 2019/07/29
閲覧 : 221
サンキュー:

15

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