BERG さんの感想・評価
4.4
物語 : 4.0
作画 : 5.0
声優 : 4.0
音楽 : 5.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
現代への前向きなメッセージ
新海監督が新聞のインタビューで、映画を制作するにあたって、近年の気候変動への思いと、昨今のネットの息苦しさというものを挙げていらっしゃいました。
気候変動や温暖化などの原因が人間の活動、温室効果ガスの影響といわれて久しいですが、一方で、地球の長い歴史の中での寒暖の変化の枠の中の範囲の変化であり、温室効果ガスでの温暖化は限定的であるという意見もあります。(平安時代の寝殿造りや青森の三内丸山遺跡の暮らしなど、現代の厳しい冬の寒さでは考えられないものだと。)70年代は地球寒冷化といわれ、80年代以降は温暖化とその方針の変化に様々な利権(原発推進など)も絡んでいるとも聞きます。
人間の活動の影響が皆無とも思わないし、資源を大切にするのは言うまでもないですが、人間の活動を責れば責めるほど、人間がいること自体が問題なんじゃないかと思えるほどに息苦しさを感じますし、もし大きな歴史の中の地球の寒暖の変化の真っただ中に今いるのだとしたら、温室効果ガス削減に躍起になる世の中は不毛ともいえます。しかし世の中の意見の大勢の見方と逆の意見を言うのはかなりのエネルギーを要し、それを許されない雰囲気もあります。
監督が映画の制作にあたって挙げた思いとは少し違うかもしれないですが、今作品では“観測史上初というが、たかだか100年程度”であったり、‟東京は入り江で元々海だった、元に戻っただけだと思ったりする”などの台詞がありました。それはつまり人間本位の考え方ではなくて、自然の中に人間が住まわせてもらっているということ、地球は地球でしかなく、単に人間に都合の悪い天気になったからといって、不安や絶望を感じるのではなくて、謙虚に共存していくんだ、そう前向きに思えるのも大切な誰かが居て、大丈夫だと思えるからなんだというメッセージを貰った気がします。
世の中が綺麗ごとで埋め尽くされたり、真実が言えないかったり、天気もおかしかったり、政治的な意見の対立であったり、社会は息苦しいことだらけだけど、その思いを吐露できる誰か、心を許せる大切な人が居たならば心は救われて、前向きに歩いて行ける、責められ、絶望するのではなく、‟大丈夫”と肯定して貰える安心感が足りない世の中に、この映画が救いとしてあるのかなと思いました。