退会済のユーザー さんの感想・評価
4.5
物語 : 5.0
作画 : 4.5
声優 : 4.5
音楽 : 4.0
キャラ : 4.5
状態:観終わった
アンチテーゼ
一生叶わぬ想いを引きずり抜け出せない苦しみ。
暗く残酷に描かれるこの世界。
これは新海監督が伝える、次に繋げる「アンチテーゼ」。
〈簡単なネタバレ〉
{netabare}
第一章【桜花抄】
閉じ込められる電車の中で抱く不安と恐怖感。
彼が想う「明里がいなければ」という気持ちは叶わず、深夜の駅で彼女は待っていた。
最悪の結末として。
そして彼女への手紙を無くした時、もし彼は帰える事が出来たなら、
それは初恋の思い出で終わっていたかも知れない。
失うものをしっかり失って。
そしてここから彼は『秒速5センチメートル』の世界に閉じ込められて行く。
第二章【コスモナウト】
花苗の視点で描かれる世界。
もし花苗が告白していれば、貴樹がいる遠い世界に行き、彼を救い出すことが出来たと思う。
しかし彼女は諦めそれをしなかった。彼はそれを待っていたのかも知れないのに。
そして彼は続ける。「たったひとつの水素原子にさえめったに出会うことない、
想像を絶するくらい、孤独な旅」を。
第三章【秒速5センチメートル】
荒廃と絶望。
理沙は彼を真剣に愛していた。だから彼を救い出そうと三年間もメールを出し続けたんだと思う。
しかしその世界に閉じ込もる彼はそれを拒んでしまう。
彼が想う明里はいつの日か本を読み切り「終わり」を迎える。
彼女にとっては既にただの昔の思い出となり、貴樹は未だにその世界に閉じ込められている。
明里はもうその世界にいないのに。
その後すれ違う踏切で、当然彼女は立ち去ってしまう。
{/netabare}
この絶望は、手紙を失い、そして言葉で伝える機会を逃してしまったことから始まった。
気持ちを伝える事の大切さ。
人は、想いを伝え、時に叶わぬ恋を断ち切り思い出にすることで、
孤独の世界に入り込むことから逃れられる。
きっとそう言うことなんだと思う。