RFC さんの感想・評価
4.3
物語 : 4.0
作画 : 4.5
声優 : 4.5
音楽 : 4.0
キャラ : 4.5
状態:観終わった
閉鎖的世界に飛び込まざるを得なくなった娘の成長物語
あにこれでの評価が高かったのと、
SHIROBAKOの前のお仕事シリーズ
ということで視聴開始。
あと精神的に参ってるので、
元気を分けてもらいたかったというのが一番かもです。
【作品概要】
東京で暮らす女子高生松前緒花。
幼馴染の種村孝一との変化のない学生生活に
ドラマチックな変化を求めていました。
その安息の日常は、
母親がダメ彼氏と夜逃げすることで破壊されます。
緒花は母親の実家を頼りますが、そこは旅館でした。
田舎の温泉街旅館という閉鎖的な空間に
否応なしに飛び込まざるを得なかった
彼女の試練の生活が始まります。
【作品に対する感想】
SHIROBAKOやサクラクエストの原点ともいえる
お仕事シリーズの一作目。
どれも厳しい仕事のお話ですが、
①花咲くいろは
…生きるためにはそこにいるしかない、
追い詰められた状況
②SHIROBAKO
…自ら望んで夢を叶えるために飛び込んだ状況
③サクラクエスト
…契約の手違いで望んでたことと
異なる仕事をする羽目の状況
比較すると最も厳しい状況です。
退路を断たれた状態で、仲間もゼロからのスタート。
持ち前のガッツとバイタリティで
道を切り開いていくのは他の2作と同じです。
やっぱりこういう作品はへこんだときに元気をもらえます。
お仕事シリーズが好きな方はこれもお勧めです。
また魅力的なキャラが多いのもいいですね。
1)物語
閉鎖的(排他的)な絶対不利の環境。
誰も協力してくれず、フォローもありません。
自分で仲間を作り、道を切り開いていかなければなりません。
普通簡単に心折れそうな状況ですが、
そこを這い上がっていく緒花の姿は本当に心打たれます。
また、緒花の母親の描かれ方を前半、後半で変えることで、
緒花の心の成長を描いているのがうまいと思いました。
前半は家の中の母親像のみを描き
「駄目な母親」を前面に出していました。
そうすることで緒花の子供の目線での不満を描いていました。
しかし後半は仕事での母親を多く描き、
緒花が全否定(期待していないと切り離していた)していた
母親に対し違う見方ができるようになったことを
描いていました。
2)作画
また作画のほうは綺麗なのはもちろんすごいのですが、
リアリティの面で「劣化」がものすごく
丁寧に描かれています。
摩擦で塗料がはげてるとこ、経年劣化で曇ったプラスチック。
こういうこだわりがすごかったです。
4)音楽
きみコさんの声に中毒性があり、何度も聴きたくなります(笑
5)キャラ
①松前緒花
納得いかないことは誰であろうと言い返す(たずねる)。
こういう娘、好きです。空気読めないとか言われてますが、
理解せずになんとなく棚上げと言うのが
一番まずいと思うのです。
閉鎖的な環境では敵だらけになってしまうことも
あるのですが、それをバイタリティで切り開いていく
力強さは好感が持てます。
②鶴来民子
「死ね」「ホビロン」を連呼する娘。
緒花を「空気読めない」と非難してますが、
一番空気読めてないのはこの娘と思います。
覚悟の程は見上げたものですが、あまりに自己中心的な
物言いはもうちょっと成長が必要と思いますね。
③押水菜子
ビビりですが自分を変えたいと思い、
仲居のバイトを始めた娘。
こういう娘、好きですね。
この手のキャラはどんくさいことが多いですが、
水泳はお手の物。
閉鎖的な空間の中で割と中立の立ち位置。
④和倉結名
分かった上で軽い女を演じているのかと思ったら、
本当に何も分かってない娘でした。
作中最も残念な娘でした。
⑤輪島巴
オネーサンキャラ好きです。
⑥四十万スイ
自他ともに厳しいカリスマ。ただ雑巾人の顔に投げたりは
厳しいとパワハラを履き違えてる前時代的なところが
あるのかなと。
⑦四十万縁
気持ちが空回りして間違った方向に行く人。
なんとかしなきゃって思う気持ちはわかるんですが。
タイプ的に組織のトップより潤滑剤として動いたほうが
生きる気がします。
⑧松前皐月
いろいろ考えてるのは分かるんですが、
母より女でありたいという考え方ならば、
子供は厳しいかなと思います。
子供を育てるなら男性も男よりも父を取るべきと考えます。
この辺はいろんな考え方があるとは思いますが。
⑨川尻崇子
院卒後6年間もよくコンサル続けてこられたなと
逆に感心するひと。
経営学の理論を学ぶのはいいのですが、
実際に利用しようとすると理屈どおりにいかず
上手くいかないものです。
大企業相手だとそれを上手く噛み砕いて末端まで
浸透させることができる人材が要所要所にいたりして、
どうにか結果につながるのかもしれません。
しかし喜翆荘の規模だともっと現場に寄り添わないと
的外れになってしまうと思います。
寄り添うには余りに経験不足だったかなと。
⑩宮岸徹
この人も指導とパワハラを履き違えている感があります。
作中よく出てくる「見てたからできるだろ」のセリフが
違和感大です。
教えられたことしかできない、考えなしの後輩を育てても
だめなのは分かるんですが、土壌も作らずに作物を
育てようとしてもだめなのではと思います。
言葉ですべてが伝わるわけではないですが、
あまりに言葉足らず。これも若さゆえの過ちか…。
6)好きなシーン
{netabare}
①孝ちゃん告白
こういうなよっちい子は「あ…何でもない」って
言えないことが多いんだけど孝ちゃんは言い切った。
線は細いけどいい子や!
②何度「死ね」と言われてもへこたれない緒花
普通ブチ切れるか傷つくかどっちかと思うんですが、
「死ね頂きました~」とか言えてるあたり
すごい耐久力と思います。
なこちの「駄目だよ、いきなり知らない人の死を願ったら」
という珍妙なたしなめもまたGJでした。
③親子三代 呑む
おかみ・おかん・むすめ
おかんの粋なオーダーで実現した酒盛り。
酒の力もあってちょっと素直になった三方が微妙な
距離感を手探りしながら話すのがとってもいい感じ。
緒花は喜翆荘での生活でただ生きることの大変さを
目の当たりにし、母の一部を認めることができ、
大人の一歩を踏み出したところが良かったですね。
④文化祭、料理班の修羅場
ミンチの言ってることは間違ってはないんですよね。
ただ、場違いなだけで。
ミンチほどの覚悟で生きている高校生って少ないし、
それを文化祭の場で突き通すのはちょっと
空気読めなさすぎです。
(徹が来るってことで気合入っていたのは分かるんですが
これが若さゆえの過ちか…)
全体を見て最適案を出す緒花の力に
みんなが救われた話ですね。
⑤粋な屋台のおやぢと場違いな緒花の告白
なんといいますか、こういうつぎはぎな感じが
逆にリアリティあっていいですよね。
綺麗に完ぺきに決まるのも良いんですが、
こういう失敗談もきっといい思い出になるはず。
{/netabare}
7)「?」なシーン
{netabare}
①ぼんぼり祭り、喜翆荘全員参加
率直に「客どうするん?」。
交互に出るとかなら分かるんですが、旅館内全員不在って
とても女将が許すことじゃないと思うんですが。
②ミンチいちいちキレ過ぎ
覚悟の程と必死なのは解るんですが、
それを他の人に当たってはいけません。
自分は自分、人は人。
{/netabare}