J さんの感想・評価
4.0
物語 : 4.0
作画 : 5.0
声優 : 3.5
音楽 : 3.5
キャラ : 4.0
状態:観終わった
前作より面白かった!
新海監督の作品は大好きで全部観てますが、今回の作品はこれまで作られてきた中でもかなり素晴らしいものだったと思います。
【良かった点】
・相変わらずの極まった映像美と壮大なファンタジーが瑞々しいジュブナイルとボーイ・ミーツ・ガールの純粋さに上手く溶け合っていて、観ていると心が洗われる
・『君の名は。』で感じた口噛み酒などのフェチシズムや、身体入れ替えのエロテンプレみたいな、いわゆる「オタクっぽい」演出もかなり緩和されている
・分かりやすさはそのままに、若干『秒速5センチメートル』や『言の葉の庭』の頃みたいな繊細な作りに回帰しつつ、作風は光のベクトルに変わっているので視聴後に清涼感がある
・倍賞千恵子さんの芝居が上手くて素敵
【不満だった点】
・ラッドの曲が強調され過ぎててちょっと気になった(どれもいい曲ではあるけど、これだけ推されるとクドい...)
・冒頭の歌舞伎町の生活に出てくるモブたちの人物造形にリアリティが薄い気がした(皆ステレオタイプな嫌な奴に描かれていたけど、歌舞伎町はあそこまで殺伐としてないし、普通は皆邪険にするよりは無関心に振る舞うと思う)
全体的には、重箱の隅を突こうと思えば話のアラも色々見つけられる内容ではあると思うけど、良い作品特有の勢いがあってそれらを気にせず、2時間近くの長尺でも飽きずに没入して観られました。エンターテインメントとしての面白さと、芸術としてのアニメーションの質を高度なレベルで両立させた作品だと思います。正直、社会状況やタイミングもあるので前作より売れることはないと思うけど、個人的には今作の方が大分好きだし、万人受けする作品だと思う。
偉そうな物言いになってしまいますが、新海監督は今回でエンターテイナーとしてさらに一皮剥けた感があります。元々、光の使い方の美しさや繊細な心理描写が邦画の岩井俊二監督に通じるところがあって好きになった監督ですが、こういう方向性も悪くないと思いました。前作のメガヒットのプレッシャーもあったと思いますが、それに潰されることなく良作を生み出してくれた監督と、アニメ制作に関わった方々に拍手を送りたいです。