たまき さんの感想・評価
5.0
物語 : 5.0
作画 : 5.0
声優 : 5.0
音楽 : 5.0
キャラ : 5.0
状態:観終わった
新海映画これにあり。
ネタバレは最後の方だけです
かつての新海映画といえば、「健気で脆そうなヒロイン」「脚」「田舎と都会の対比」「線路と鉄道」「猫」「日本の古典」「鬱エンド」など、独特のフェティシズムが伺えました。そうした要素を大きく転換したのが前作『君の名は。』でした。もちろん全てではありませんが、ヒロインは健気でしたが、気の強さを備えて方向が変わりましたし、ヒロインの描写で目立ったのは胸でした。あとは猫も殆ど登場しなかった記憶がありますし、鬱エンドではなく、始まりを予感させる前向きな終わり方になりました。結果としてこちらは記録的なヒットを飛ばしましたが、古参のファンは物足らなさを感じたでしょう。どちらが正しいということはありません。ネタバレ回避の為に抽象的な話になりますが、今回は、前作の良さを継承しつつ、新海ismをふんだんに盛り込んだ名作と言えるでしょう。今回も、ストーリーの大枠は『君の名は。』と似た要素もありつつ、今回の大きな違いは、「会えないヒロインに会いに行く話」ではなく、少なくとも会えているのです。会えている、つまりお互いの人格を我々も彼らも知っているからこそ、主人公へのより一層の感情移入がなされるのです。あとは、新海作品にしては珍しく、恥じらいながらも、手探りながらも、ある程度恋心を自覚しているというのも胸キュンポイントです。前作が映画としての最高峰であるなら、これは「新海誠の」映画の最高峰と言えるでしょう。迷うならば是非見てみてください。新規や古参を問わず、誰にでも楽しめること請け負いです!
以下ややネタバレを含みます。
設定がわからないと仰る方が多いですが、説明してませんでしたか?
帆高が家出をしたのは、「地元が息苦しいから」というそれ以上でもそれ以下でもないでしょう。それは地方出身者が往々にして言うことであって、理由としては十分であるように思えましたが…。
あとは陽菜が弟と二人暮らしの理由は、偏に「母が昨年亡くなったから」というのと、「今の生活を壊されたくないから」という2つの理由でしょう。途中陽菜は凪に対して、「ここから先は危険だから、お前は小学生だし、安全な所(≒実家?)に行ったほうがいいよ」という提案をしたにも関わらず、ついてきます。結果として、実家とは何かしらのいざこざがあったのでしょう。
一度話が逸れます。新海作品にはよく片親しかいない人がいますが、今回は母親を亡くした陽菜・凪姉弟と、そして須賀圭介でしょう。須賀の場合は、最愛の妻を亡くし、その妻の実家といざこざがあり、なかなか娘と会えないという状況が続いています。須賀は何かと陽菜のことを気にかける描写がありますが、そこに起因するものと考えればわかります。
ちなみに、それと対比する形で描かれるのは帆高です。彼には母親がいますが、「帰りたくない」と度々口にしていることから、疎ましく思っているようです。
こうしたことから言えるのは、彼ら主人公たちは、ステレオタイプな人々をネガティヴに評価しているということでしょうか。警察や、田舎の家族や、結婚相手の母親などがその例です。その観点で行くと、陽菜の実家不仲説は可能性としては考えられます。なぜなら彼らは、子供だけで暮らすということをしているわけですからね。だからこそ、「世界を晴れにしてみんなと平穏に過ごす」ことではなく、「世界を雨にしてでも大切な人との時間を取る」ことを選択した理由についても、同様に推測できるでしょう。