STONE さんの感想・評価
3.2
物語 : 2.5
作画 : 3.5
声優 : 3.5
音楽 : 3.0
キャラ : 3.5
状態:観終わった
溜まった鬱憤を晴らすほどには
原作は未読。
異世界転送ものだが、これまでの同系統作品と違い、主人公の岩谷 尚文が転送早々かなり
ひどい境遇に陥るという展開が一種のアンチヒーロー的な展開を想像させて期待してしまった。
しかし、その後の尚文は冤罪を晴らそうとするとか、自分を陥れたマインに復讐すると
いったこともなく、いささか拍子抜け。
リアルな話だとそういうことは多々あるが(感情的な思いとは別に仕事、学業、家事などを
優先せざるを得ないみたいな)、フィクションなんだし、序盤の冷遇に対するリアクションが
もっとあっても良かったんじゃないかと。
この後の尚文一行の行動はなんか行き当たりばったり感が強く、流れが悪いような印象。
この辺は原作からしてそうなのか、アニメ化に当たってのシリーズ構成によるものなのか
判りませんが。
尚文自身の感情も世の中に対して拗ねているような冷たい時もあれば、急に素直になったような
時もあって、割と判りづらい感があった。
この辺は根が優しい人なのに、この世界での仕打ちで生じた不信感がいつまで経っても
抜けないものゆえな感じで、ある意味ツンデレのような感じにも見えたり。
尚文にとっての敵役的存在は多々登場するが、その中でも中心的存在だったのが北村 元康と
マイン・スフィアのコンビ。
特にマインは序盤から皆が尚文に冷たい中、唯一の味方のような感じで登場しただけに、
その後の裏切りはより非道に映る。
一方の元康は悪役感もあるものの、むしろ安易にマインの口車に乗せられるお馬鹿さん振りが
印象深い。ある意味、最初から悪意全開のマインよりイライラさせられるキャラかも。
このお馬鹿に描くという点は、元康ほどではないものの、残り二人の勇者である天木 錬、
川澄 樹にも見られるもので、主人公を持ち上げるためにライバル的キャラを愚かに描くという
やり方は他作品でもあるものの、本作はそれが顕著な感じ。
ある程度の主人公上げはあってしかるべきだとは思うけど、ここまで極端だと主人公の優秀さを
示す話が書けないのかと思えてしまう。
以後も随所随所にマインと、彼女の擁護者的存在になった元康が登場するが、中盤以降は
コミカルに描かれることも多くなった。特に元康がそんな感じ。
後に尚文が報われ、視聴者の溜飲が下がるようにするには、シリアスな嫌われ者でいた方が
良く思われ、そういう点ではこういったコミカルな演出はあまり好ましくないように思えた。
題名を忘れたが、以前洋画で20世紀初頭のアフリカを舞台にした冒険アクションものがあり、
当初は敵がドジなコミカルなタイプの悪役だったのに、終盤で主人公の妻子を殺害するという
行為に出て、そのキャラのイメージが捉えにくくなった記憶がある。ドロンジョ一味が
ヤッターマンの家族を殺害する展開が近いイメージ。
そこまで極端ではないが、本作のマインや元康に対するコミカル演出はそれの逆をやられた
感じ。
尚文の身の潔白が晴れるのはかなり終盤で引っ張った割にはそれに見合ったカタルシスが
得られたかというとそれほどでもという感じ。そういう意味ではちょっと遅すぎた感が強かった。
盾の勇者自体がメルロマルクにおいて何故嫌われるのか?という部分も一種の謎として
引っ張った割には驚くほどの理由ではなかったかなあ。
不満ばかり上げ連ねてしまったが、キャラクターデザインや作画など、アニメとしての基本的な
部分は結構好きでした。
2019/07/16
2023/06/18 加筆・修正