退会済のユーザー さんの感想・評価
1.9
物語 : 1.0
作画 : 1.5
声優 : 4.0
音楽 : 2.0
キャラ : 1.0
状態:観終わった
内容が制作側にブーメラン
物語の始終で空いた口が塞がらない作品でした。本来、混ざり合うことの無い要素を「理想論」「綺麗事」によって強引に纏め上げてしまっています。
まさか、「エガオノダイカ」のタイトルそのものが、制作側であるタツノコプロのスタッフにブーメランしてしまうとは・・・。
タツノコプロの記念作品だったようですが、責任者はよくこれでOKを出せたものだと感じました。
ここからはネタバレです。いつもは1話ごとに感想を書きましたが、ストーリーが短く内容が散乱してしまっているので、要所事に掻い摘んで書きます。
{netabare}
≪明らかに1クールでは足りないストーリー構成≫
遠い未来に、地球からとある惑星に移住してきた人類が、エネルギー資源である「クラルス」をめぐり、戦乱に巻き込まれるお話ですが、
ソレイユ王国の王女とグランディーガ帝国の女性騎士のWヒロインの立場で物語りは進行します。
戦争という、説明に話数を割く必要がある題材の要素に、王女の心情や女性騎士の生い立ちのシーンが大半を占める為
ロボットがメインの戦闘なのに、肝心のロボットについては殆ど触れず、
戦況は進むものの、視点が常に王女・女性騎士にスポットが当たっているため
王国と帝国の戦況が良く分かりませんでした。また、明らかに尺が足りていないので、物語中の時間変化が速過ぎて最終話の展開に強引さを感じてしまい、「これで終わりなの?」と納得が行かなかったです。
≪OPと本編との矛盾≫
王女と敵国の女性騎士がOPでは一緒にいるシーンが多いのですが、最終回までお互いに分かり合う仲では無く、アニメを視聴していても違和感しか無かったです。
しかも、最終話まで彼女らが直接対峙することはありません。
≪戦争アニメなのに王女は平和主義を貫こうとする矛盾≫
王国は帝国に一方的に攻められ、大事な臣下がバタバタと戦死していきますが、最後まで「誰も殺したくない」という意思を貫こうとします。
序盤から戦争の指揮を取っていましたが、苦渋の決断を迫られても、「敵は殺させないが、味方も助ける」という矛盾した指令を続けるため、部下は無意味な死を遂げます。
自身の命令によって、国民が死ぬ様を見て裏では苦悩しているのですが、気持ちに覚悟が出来ないまま「平和主義」「理想論」を掲げたまま戦争の指揮を取り続け、最終的に殆どの臣下を失うことになります。
綺麗事では、誰も救えないし、守れないと臣下は王女に最後のメッセージを残しましたが、「でも私は人間を信じたい」と心情は曲げないままでした。
一人の国民がそれを掲げるのは大いに結構ですが、多くの民の命を預かる身としては失格かと思います。
≪あれも、これも欲張りな制作陣≫
戦争問題・平和主義・殺さずの理想論・エネルギー問題・人類存続の危機という
1つの要素だけでも、大きな論争になるテーマを、この作品は1クールという短さのお話に全部取り込んでしまいました。
その結果、全てが中途半端な説明で、戦争の原因となった「クラルス」というエネルギー資源に隠された欠陥と、それによる人類の滅亡についての説明があまりにも簡潔に説明されていてビックリしました。
そして、戦争を解決する方法が、人類の生命線である「クラルス」を放棄するという、あまりにも馬鹿げた方法でした。「クラルス」は兵器にも使えるというだけで、元々は作物を育てる為のエネルギー資源です。
「平和主義」を叶える為に、人類の生きる糧である「クラルス」を放棄するという、あまりにも大きな矛盾をそのままにする姿勢には疑問しか残りません。
≪理想論では何も救えない≫
この作品の肝は正しくこの事に尽きます。中途半端な覚悟を持った人間の指揮下では誰も生き残れないし、誰も救われることはありません。
最終話では、エネルギー資源「クラルス」が完全に停止し、人類は原始時代の生活に逆戻りする生活が待ち受けています。
物語中盤で、実験的にクラルスの稼動を止めただけで、夜は凍える程の寒さになっており、戦争孤児や家を持たぬ貧しい人間が凍え死ぬことは明白です。
しかしそのような問題には一切触れず、いがみ合っていた帝国と王国は、何の迷いも無く「戦争終結」を宣言していますが、ありえないです。
一国の王女により、惑星の人々の生活が原始時代の水準まで落ちてしまったことに対し、普通はクーデーターや暴動・食料の奪い合いや殺戮が待ち受けていることは安易に想像できるでしょう。
≪タイトルの内容がブーメランしてしまった制作側≫
今まで書いてきた内容の通り、戦争による命の悲惨さを伝えようとして、
「殺さずの平和主義」「理想論」だけで全てを丸く解決しようとしたスタッフの行いこそ「エガオノダイカ」そのものであり、
この作品は、王女の「(エガオ)平和主義」を叶えようとして、「(ダイカ)現実との矛盾」を犠牲にしてしまったお話です。
このような考えで失敗した主人公として、「Fate/StayNight」の衛宮士郎が真っ先に出てきました。
彼は「自分よりも常に他人」を優先し、「全ての人間を救う正義のヒーロー」に憧れ、自分を殺めようとした戦争の敵でさえも殺さずに守ろうとしますが、それは単なる理想でしかなかったという物語でした。
結局、彼は生涯「叶わぬ理想」を追い求めた結果、助けたはずの人々から恨みを買い殺される末路になります。
この作品の王女も例外では無く、死期はこのような結末になるでしょう。
タツノコプロの記念作品が、何処で間違えたのか、このような悪いお手本みたいに成ってしまった事が残念でなりません。
{/netabare}