takarock さんの感想・評価
4.0
物語 : 4.5
作画 : 4.0
声優 : 4.0
音楽 : 4.0
キャラ : 3.5
状態:観終わった
ただのブタ野郎が劇場に行ってきただけの話
まずは、劇場版の情報整理からしていきたいと思います。
原作未読、劇場視聴も1回だけなので、
理解し切れない点もありました。
まさかこれ程多重構造になっているとは思いもしませんでした。
間違っているところも多々あるかもしれませんが、
一応情報整理してみました。
円盤が発売されて、検証する機会があったら修正するかもしれません。
「(大人)翔子について」
牧之原翔子が小4の時に出された「将来のスケジュール」という課題ですが、
この課題を書けないことによって翔子の思春期症候群が発症します。
「時間を進めたくない」と願った翔子は
周りとは違う時間軸を生きていくことになります。
翔子の流れる時間は周りよりも遅いのです。
イメージとしては、「時間よ止まれ(ザ・ワールド)」という能力が使えたとして、
周りの時間は止まっているのにも関わらず、自分の時間軸だけは進んでいます。
つまり、自分だけ成長してしまいます。
翔子に残された時間は増え、
さらに高校生、大学生、大人になりたいと願いも叶います。
実際に「時よ止まれ」なんてことはできませんよ。
これは、翔子の流れる時間は周りよりも遅いということを
イメージしてもらう為の例え話。
そうして生まれたのが大人翔子
・・・ということではないのが若干ややこしいところです。
成長した翔子は、劇中では未来の出来事である
梓川咲太がクリスマスイブに事故死→心臓移植によって成立している存在です。
大人翔子は小4の時に思春期症候群を発症させたことによって生まれた
憧れの未来像ではなく、
咲太の命を救うべく未来から過去に来た存在です。
未来から過去に?
ちょっと理解が追いつかないかもしれませんので、この点については、後述します。
「咲太の胸の傷」
咲太の心臓を移植したことによって翔子は、
本来の寿命の先を生きることができました。
しかし、それは咲太の死ということが前提です。
そんな世界線は改変してやるって未来からやって来たのが、大人翔子です。
未来→過去へ。
咲太が交通事故に遭う前の咲太と未来からやってきた翔子。
未来からやって来た翔子は咲太の心臓移植によって存在する為、
この二人は同じ心臓なんですよね。
その拒絶反応というべきものが、咲太のあの胸の傷です。
同じ時間軸に同じ心臓を持った人がいたらおかしいですよね?
「別の世界線へ」
大人翔子が、(自分よりも麻衣との約束を守るということを見越して)
咲太を事故現場へ向かわせない為の約束を取り付けますが、
この嘘を咲太は看破して、自らが犠牲になろうとします。
しかし、その結末は、そんな咲太を庇った桜島麻衣が犠牲になってしまいます。
この結果、麻衣の心臓が翔子に移植されます。
このことによって、咲太の胸の傷も消えます。
麻衣の心臓を移植した翔子と咲太、別の心臓です。拒絶反応は起きませんよね?
「その世界線は許さない」
麻衣さんがいない世界なんて自分には耐えられない。
ここで咲太は一つの決断を下します。
それは自分も麻衣も犠牲にならない世界。
換言すると、翔子を見捨て自分も麻衣も死なない世界線です。
その為に咲太は過去へ戻って過去改変を行おうとします。
「ちょっと待って! なんで過去へ行けるの?」
まったくの推察ですけど、思うに、咲太はクリスマスイブ前に
思春期症候群を発症させています。
自分が犠牲になり翔子を助けるのか、
それを避けて麻衣と二人で幸せになる未来を選ぶのかの二択を迫られて、
そんな未来(クリスマスイブ)は来なければいいと願ったはずです。
これは、根本的には、小4翔子と同じ願いですよね。
このことによって違う時間軸の自分が生まれたと考えれば、
一応の辻褄が合います。
つまり、咲太が発症した思春期症候群は、翔子と同じスタンド(思春期症候群)だった
ってことではないのですかね?
そのことによって生まれた少し未来の自分は、過去をやり直したいってことを
揺蕩う意識の中で強く願えば実現すると。
単に大人の梅ソーダのせいって言ってもいいんですけどねw
「これまでの徳が咲太を助ける」
事故前に戻った咲太は誰にも観測されません。
必死で自らを呼び掛ける咲太に気付いたのは、
「尻を蹴り合った」古賀朋絵。
その他にも、違う時間線を生きている自分自身にでも「電話」でなら会話可とか、
豊浜のどかの協力が必要だったりとかと、
各種ルートが活きています。
これまでやってきたことは決して無駄じゃなかった!ってことですね。
「たとえ、過去改変の為に違う世界線に行こうとも記憶までは消し去れはしない」ってことです。
ここ重要。
「小4翔子が思春期症候群を発症しなかった世界線」
小4翔子が「将来のスケジュール」を書けた世界線です。
翔子が思春期症候群を発症しないってことは、
海岸での咲太との出会いもなかった世界です。
そんな咲太が峰ヶ原高校の生徒になっているのは何故?
それは、過去改変しようが記憶までは消し去れはしないってことだからでしょうね。
いくら過去を改変しようが、別の世界線のことが夢に出てくるんですよ。
ならば、また同じようなルートを辿るはずです。
そして、それ故に、最後のシーンで翔子の存在に気付くことができたのです。
「アニメと劇場版の総括」
思春期症候群=怪異と考えれば、話のフォーマットは「化物語」です。
そこに「俺ガイル」のエッセンスを加えたり、
劇場版に至っては、「シュタインズ・ゲート」の話作りに酷似しています。
ヒット作品の売れた要素を緻密に分析して、上手く取り込んでいると思います。
思春期症候群を量子力学によって説明するというアプローチも、
舞台作りとしては秀逸でした。
各種ヒロインルートに関しては、
出来不出来の差は結構あるかもしれませんが、
全体的には楽しめました。
尺の問題もあり、不満点がまったくない訳ではないですけど、
少なくともストーリーテリングについてはプロの仕事だなと強く感じました。
玉石混交というか、最近は素人のオ○ニー作品も少なくないので。
ただ、キャラに関して言えば、
気になったのは咲太の台詞回しと対応力の高さ。
童貞ブタ野郎とは思えないほど、達者です。
なんかやらかしても、即座に対処する対応力と行動力。
DK(童貞高校生)なら普通、その場で直立不動ですよ。
読者、ないし視聴者のなりたい理想像、憧憬型主人公の典型なんですけど、
ちょっとやり過ぎ感があります。
お前は、SGDK(スーパーグレート童貞高校生)かと。
それに、咲太を始め本作のキャラは他者を優先させすぎというのも気になった点です。
なんの躊躇いもなく自らの命を投げ出そうとするのは、かなり違和感が残りました。
こうした気になる点はあるにせよ、少なくともアニメ版を楽しめた方なら
劇場版は必見でしょう。出来はかなりいいと思います。
というか、これを見なきゃ何も完結しないから!
何も劇場で!なんてことは言いません。レンタルでもなんでも是非見て頂きたい。
「おまけ」
劇場で体感してよかったのかどうかは分かりませんが、
事故シーンは本当トラウマw 音とか本当凄かった。
安全運転しましょうね!!