101匹足利尊氏 さんの感想・評価
3.9
物語 : 3.5
作画 : 3.5
声優 : 4.0
音楽 : 4.5
キャラ : 4.0
状態:観終わった
不信の病に冒された世界
原作小説はweb版、ライトノベル版、共に未読。
例えば、争いが続く世界を団結させるにはエイリアンなど
人類共通の敵をけしかければ良いと言う思考実験。
或いは、多種族でいがみ合って来たけど、世界の危機を前に、みんなで力を合わせて
魔王を倒してハッピーエンド♪と言うRPGの王道シナリオ。
本作みたいな物語を体験すると、そんな物は嘘っぱちだと痛感します(苦笑)
世界を襲う“波”の災厄を前にして、別世界から“四聖勇者”たちを召喚するに及んでも尚、
{netabare} この異世界は、国同士で勇者召喚すらも出し抜けの一手として策を弄するなど足を踏みつけ合う。
世界の危機すら、親兄弟で繰り広げられる政争の具でしかない。
民族差別上等。“波”すら迫害の好機にする。{/netabare}
観ているだけで“カースシリーズ”が解放されそうな浅ましさw
この世界の危機の本質は不信なのだとつくづく思い知らされます。
本作の“波”の真相を推測すると……
{netabare} “波”の活力源は嫉妬、差別、憤怒などの悪意であり、
好物である不信に取り憑かれた世界を求めて、
次元を越えて巡り歩く病原菌のようなもの。
故に呪いの盾は強力だが、長期的に“波”を増長させる劇薬?
別の異世界からやって来たグラスたちも
“波”の災厄も、風邪の如く、うつせば治るくらいの感覚なのでしょうか?{/netabare}
今回、成り上がることになった盾の勇者こと岩谷 尚文。
ドン底を味わった故に、彼にとってもゲームっぽい異世界であるこのファンタジー世界を、
いち早くリアルな世界として真剣に捉えたからこその逆転劇だったと思います。
特に中盤、{netabare}他の三勇者が“おつかいクエスト”をやっつけでこなした後、
起こった諸問題を、盾の勇者様御一行が尻拭いして回る件。
住民の困り事をクリアして報酬ゲットしたら終わりのゲーム内イベントとして処理するだけの三勇者。
闇経済の活用も含めて、この世界を本気でサバイバルして来た尚文。{/netabare}
プレイヤー感覚とリアル感覚の意識の差をハッキリ感じました。
ただ、他の三勇者がポンコツかと言うと、私はそこまで責められないと感じました。
だって、少なくとも日本国やそれに極めて近い世界でゲームに勤しんできた勇者たちには、
視界に各種バロメーターやメニュー画面が見えるファンタジー世界なんて、
余程、痛い目にでも遭わない限り、ゲームであって遊びであるとしか思えませんよw
その上、かなりチートな勇者専用武器&能力を授かり、
イケメン、美女まで侍らせれば、調子に乗らない方がおかしいかと。
私も転生されたら槍の勇者みたいに、萌えハーレムイベントとか期待しちゃうと思いますw
そして、{netabare}巨鳥に蹴り飛ばされるとw{/netabare}
むしろ、世界をゲーム感覚で合理的に捉えて来た
三勇者なりの視点や長所も垣間見えました。
やはり、価値観の異なる者同士で協力し、視野を広げることが、
“波”攻略の鍵なのだと思います。
音楽は良曲揃いだった主題歌も然る事ながら、
ケビン・ペンキン氏の劇伴は相変わらず私の好みのツボを押さえていました。
BGMが金管や打楽器の力押しで前面に出張って来るのも熱くて良いですが、
彼みたいに弦楽の繊細な音色も駆使して、
後衛でジックリとシーンを暖める劇伴も良いものです。
『メイドインアビス』に引き続き、彼は私のファンタジー世界への執着を深めてくれました。
好きなキャラは色々いましたが、
フィーロちゃんは可愛くて食いしん坊で面白い鳥型生物だったと思います。
一応、鳥の中でもかなり特別な鳥であるはずなのに、
馬車をあんなに楽しげに引く魔物なんて、どこの世界を探しても恐らくいない(笑)
あれは、ある意味、究極のチートだと思いますw
続編があれば、私はまた、フィーロちゃんの馬車引きで幸せな気持ちになりたいです♪
だから、今後も、{netabare}盾の勇者様御一行はファストトラベル禁止でお願いしますw{/netabare}