ヒロウミ さんの感想・評価
4.2
物語 : 4.0
作画 : 4.0
声優 : 4.5
音楽 : 4.0
キャラ : 4.5
状態:観終わった
ドラクエ、ファイファン、リネージュと記号で略さない時代の温もりを
終盤以前の物語展開や設定は秀逸で、山を登りきった時こそ具現化する汎用小説の無感動。見事作り上げた制作陣に諸手で賛美を。
現実世界で不運な死を迎え異世界転生?なろうの毒だな!と駆け出しから不穏な空気があったもののそれは杞憂に終わった。
誰しもにあるLv1からのスタートで更には主人公だけ陥れられ周辺からの庇護も受けれず忌み嫌われながら自らを自らで助け成長していく物語。
幾度と騙され常軌を逸した環境下で生活し続け相当な人間不信となりつつも結局のところ緩萌ジャパンの温室育ちである他の勇者と同じく本当の悪人に成りきれない。大きな悪意を向けられながら害意や殺意を向けることが苦手で簡単に復讐心が植え付かない日本人としての象徴的なシーンも多い。しかし、結局のところ同じ時を過ごすとともに関係を無意識に育んでしまう主人公と他のキャラクターたちへ向ける目とやり取りが嫌味がなく心地良い。
ハーレム状態であるのだがよくある性的にイチャコラするってものではない。キャラクター同士の関係性、過ごした時間に準じた愛情のようなもので不快感は一切なかった。
ストーリー展開は丁寧に散りばめた伏線を少しずつ回収しつつキャラクターたちの成長していく描写も重ね退屈するものでは無かった。マイナスからのスタート、徐々に信頼を勝ち得て負債を完済し新たに現れる問題、束の間の安寧と物語の中締め。2クールがあっという間に終わっていた。
各々のキャラクターも丁寧に描かれている作画は終始安定しており大きく崩れることもなく神作画とまでは言わないものの十分良作の域で3DCGもふんだんに使用され迫力のあったものだった。
舞台を盛り上げてくれた劇中音楽に声優陣の演技は高ぶる見せ場をたくさん作り世界に引き込んでくれるものでもあった。フィーロとフィトリアだけは耳をつんざくようなキーキー声にしか聞こえなかったがメインキャラクターほどの出番もないので救いだった。
続編があれば是非ともアニメで見てみたい、久しぶりにリアルタイムであった作品に対しそう思えた。
が、一抹の不安もある。武器などのアイテムデザインのチープさ、技の名前のセンスの無さと幅の狭さがとてつもなく大きな原作の地雷臭を感じてしまう。物語の繋ぎの部分は言わば飽きさせず整合性をもたせながら新たな展開が必要になるのだが「なろう」の信憑性は高くはない。
ラストバトルが派手さと言うか盛り上げポイントをあっさり終わらせてしまったのはもったいなかったが全ての面で終始楽しませてもらえたこの作品。原作者が下手な暴走をせず制作会社が再び上手く改変し2期制作を楽しみにしたい。
メイドインアビスにこの作品やおしりかじり虫と、この会社からは目が離せなくなりそうだ。