ヒロウミ さんの感想・評価
4.0
物語 : 4.0
作画 : 4.0
声優 : 4.0
音楽 : 4.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
終息は終末を迎え新たな序曲の礎となる
1クールにバランス良く詰め込まれたヒロイン伝記。ジブリを意識したストーリーと「すかすか」展開を織り混ぜたファンタジー作品。
物語の主軸は第二次世界大戦中のヨーロッパ諸国をモデルとした大戦と魔女を絡めたリアル寄りのファンタジー作品。ドイツをモチーフにした帝国と侵攻に喘ぐ周辺各国、関連国のしのぎの削りあいを大きくはみ出さず無駄なものがなく完走はあっという間だった。
ただ関連国の政治的思惑や関与が少し弱い。実世界であればある程度の情報の流通があるものの意図的に排除されているかのようだった。
また、帝国の圧倒的な技術革新の速度の違和感などがリアル寄りに描写された世界観から物足りなさや違和感を覚えてしまうものの「if」と足してしまえば概ね問題なく纏められたストーリーとなるだろう。むしろこの短い12話でキレイに収められたのは素晴らしいと思う。
その物語の枝葉にあった小さな「因果応報」、願うことと実現したものに対する対価の積み重ね。この小さな物語が本筋の物語の大きな幹の外皮となり物語を昇華させており、この部分で強くジブリを感じたのかもしれない。
キャラクター作画に時折崩れたりふにゃふにゃ走ったりするものの終始丁寧に描かれており満足できるものだった。特に兵器や戦闘に対する描写は秀逸でしっかりとした下調べのもと描かれているのだろうと思えるものだった。
中の人たちのハマりも良く、演技もさすがと言ったところだがイゼッタの無垢さが物語の邪魔をすることも多々あった。公女との対比でアホで子供じみたキャラクターになったのだろうが物語からはもう少しくすんでいてても良かったのかもしれない。
あとこの作品では公女に対するイゼッタや近衛たちの忠誠のモチベーションを愛情のようなもので表現されており実にラノベ臭かったのだがこれは夢見過ぎた設定で邪魔に感じてしまった。
色々書いてみたものの全ての面で満足できる作品でたくさんのものを感じ取れるものだったし劇中音楽の盛り上げも良くとても楽しめた。
物語も幼女戦記のように都合良く物語を動かすためのキー「存在X」のようなものもなくごく自然な展開であったし全12話視聴し終えたときにはスッと落ち着くものがあった。ジブリのような物語が好きな人間としては最後は救われるものがないと落ち着かないってのもあるけども。
最近では珍しい制作陣の意図というかベクトルを感じることのできるしっかり練り込まれた作品と総評できよう。