退会済のユーザー さんの感想・評価
3.2
物語 : 2.5
作画 : 4.5
声優 : 3.0
音楽 : 3.0
キャラ : 3.0
状態:----
ディスコミュニケーションと神秘性
映像の部分でいえば極めて完成度は高い。
強いて言うならばやはり前半の坂を駆け降りるシーンなどで不気味の谷を感じてしまった。
物語の部分でいえば、実はそんなに難しいことは言っていない。
この作品の内容が難解で、読み取りにくい理由は、ある種の人間が観測不可能な言語化できない現象を神秘的なものととらえて映像で表現しているからである。
私が今作の評価を低くした理由として、あまりにもその神秘性によって、登場人物の葛藤が回収されてしまうところにある。
私から見れば、主人公である流花の部活動における挫折を海や空の出会いによって、起こる神秘的な体験をすることで、生命の神秘や美しさ、尊さなどを経験し成長すると言う流れである。
しかし、そこにあるのは、神秘的かつ特別な個人の体験であり、それは普遍的だともいえるし、あまりにもファンタジーだ、SFだともいえる。その点において抽象的で具体性に欠けると私は思う。
私が先ほどからいう神秘性とは、ある種の観測不可能な現象を言っている。
つまり宇宙の誕生、地球の誕生、生命の誕生、人間の誕生、人間の分解できない内面などである。
しかしそれは、主人公の悩みである友達や家族とのディスコミュニケーションと直接接続することは難しい。なぜならば主人公は葛藤の中で友達や家族との関係性から閉じているからである。この点を考えるとエンドロール前のカットは極めて不可解に思える。
これらの事から私のこの作品に対しての評価は「神秘性を使った自己啓発」でしかなくもっと強く言えば自己啓発すら神秘性に回収されてしまう。
映像は気持ちのいいものだが、そこから得られるものは極めて曖昧なものである。