緑のラン さんの感想・評価
4.2
物語 : 4.0
作画 : 5.0
声優 : 4.0
音楽 : 4.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
完成度の高さに驚かされました
アカデミー賞アニメーション部門を受賞したと言うので見てみると、その完成度の高さに驚かされました。凄いです。
スパイダーマンはマーベルコミック(アメリカのコミック)の中で唯一映画化権をソニーが持っている作品です。実写版のスパイダーマンとしては、サムライミ版とアメイジングスパイダーマンが有名です。今回見たスパイダーマンバースもソニーです。
2つの実写映画は、それぞれ色合いが違いますがアクションに定評があります。サムライミは、もともとホラー監督として有名でしたがスパイダーマンの大成功で以降は、実力監督の仲間入りをしました。なお、サムライミ版のヒロインはメアリー・ジェン。アメイジングスパイダーマンのヒロインは、グエン・ステイシー。
今回のスパイダーマンバースには、両方のヒロインが出てきます。ハリウッド映画でシリーズ物では、こういう細かい所をオマージュとして仕込むのが好きですよね。
スパイダーマン(ピーターパーカー)の彼女がメアリージェン。
そしてスパイダーウーマンが、グエンステイシー。
他にもペニー・パーカー、ピーターBパーカー、ピーターポーカー等。。
(ペニーパーカーは、原作と異なり日本のアニメキャラのように改変されてます。)
スパイダーマンバースのCM宣伝で既に判っているので書いてしまうと主人公のピーターパーカーはいきなり死んでしまいます。そして悪は残る。それを倒すために別のスパイダーマン達、女スパイダーマン、黒人スパイダーマン、ハードボイルド、カトゥーン、ジャパニメーションなど、多種多様なスパイダーマンが集結。つまり、いろんな製作方法(CG、手書き、デフォルメ)のスパイダーマンが混在してます。
CGと言ってもCGの上から手書き(アルペジオから始まったセルルックアニメの進化版)で、確かにアニメなのだけれど実写と見まごうような完成度。立体感もありながらアメコミの雰囲気も残した、マーベルコミックからそのまま飛び出してきたような映像です。
これだけなら単なる作画技術だけですが、そのカット作りがまた独特。コミックの1コマのかっこいい絵を中心に、その1コマに至る為に長回しの1カットを使う。
だから最後の止めの1コマがめちゃくちゃかっこいい。まるでその1コマの為に脚本や演出が作られているんじゃないだろうか?と思えるほどです。
また作中で感じたのは新海誠の影響。新海誠のように1枚絵で見られる映像でその印象の強い1コマを先に決めて、そこに至るまでの過程を逆にアニメーションする。この効果は絶大で見たことの無い初めての感覚を感じました(無理やりなところもあり混乱もするけどね)。ストーリーもメッセージもしっかりしているし、ちゃんとスパイダーマン全体としてのコンセプト、”勇気”これも忘れてません。
また多くのアニメや映画のオマージュが沢山盛り込まれているので、映画やアニメ好きは、それを見つけてにやけてください。僕もいくつも見つけましたよ。(攻殻機動隊はすぐ判るでしょう。)
作画も演出もストーリーも素晴らしかったのですが、一つだけ気になった欠点。それは主人公です。黒人が主人公ですが、これは今のアメリカのホワイトウオッシュ問題(白人俳優が不必要に使われると言う差別問題)が影響していると思います。ポリティカルコレクトネス(政治的中立性)が行き過ぎて映画のような創造物にまで多様性を押し付け批判をかわす為に無理やりゴリオシ(黒人主人公)したと考えています。
また黒人を主人公にする際、不良やオタクなどの属性にしたりすると、これまた黒人差別とか言われかねない。だから中途半端に個性の無い薄っぺらい主人公になり一番つまんないのが主人公になっていました。この映画を見た人は、きっと主人公以外の人に共感するでしょう。それだけが残念でした。
なお、製作元のソニーは、この作品の価値をまだ理解していないようです。アメリカでの上映館数はそんなに多くはありません。しかし、アニメとしては、一つのターニングポイントとなるような重要な作品でした。今後、この作品に影響されたアニメがきっと世界中で作られると思います。
ピクサーとはまた異なる感性を中心にした丁寧なアニメーションでした。