緑のラン さんの感想・評価
4.8
物語 : 5.0
作画 : 5.0
声優 : 4.0
音楽 : 5.0
キャラ : 5.0
状態:観終わった
あまりの映像の美しさに見とれました
youtubeの米津玄師の海の幽霊を見て、あまりの映像の美しさに見とれたので映画をみてきました。
期待通りの素晴らしい映像と情報量の多さで見た後に頭がクラクラしました。言葉で書いてしまうと陳腐になってしまうけれど、この作品が伝えたかったのは、命の讃歌。命の尊さと愛しさです。アニメとしての作画も完璧でジブリすら超えてます。光や水は当然ですが空気すらも描いてます。アニメはやはり絵です。圧倒的な絵の美しさ繊細さ丁寧さがあって、その次に伝えたいことが伝わるんです。
少し引いて背景をちゃんと見せる映像が映画館のスクリーン上で描かれた自然(背景)の大きさがちょうど本物の景色に包まれ作品の中に居るようで自然、生物、人、物などの肌感覚まで感じました。また大きな目が印象的でそのアップや目に映るものを見せることで内面に引き込まれました。自転車で走ってるシーンでは、雨が魚になり、空気や雨がまるで海のような表現でまとわりつく雨の息苦しさを感じたのには驚き。それらが美しい絵で表現され、その映像美に目を奪われ続けました。
主人公のルカ、そしてジュゴンに育てられた子供、ソラとウミ。彼らのひと夏の体験と成長の中に深いメッセージが含まれていてそれに、女性的な物を感じたので見終わった後に、男である自分では読み解けなかったり受け止められなかった物があるんじゃないかと心配になったぐらいです。ところが原作者を確認して(男性的な名前だけど、ペンネームだけで本当は女性では?)改めて男性だと知って驚き。どう考えても感性が女性。もしやLGBTなのか?とすら疑ったぐらいです。
作中で出産を疑似体験し連なる命から、命の尊さ愛しさを感じ、ソラとウミにより世界が一体となる事で主人公の心の成長を表現しています。でもこれが男性視点なら命の創造だけで終わったでしょう。そこが女性視点と感じた理由。命を生むこととは、作る事だけでなく、その生まれた命を尊く感じ愛し慈しむ事だと言う事。そして男性ですらも命を生み出すことの尊さ愛しさを感じる事ができる稀有な作品です。
気になったのは、こんなに素晴らしい作品だけど抽象的な表現が多く、あまりに大きすぎるテーマを理解できない人が居るんじゃ無いだろうか?映像に圧倒され、情報量に圧倒され、その中でアワアワしているんじゃないだろうか?アニメなんだけど、子供には理解できないんじゃ無いだろうか?男だとわからないんじゃ無いだろうか?それを心配しました。だから見た後にすぐ女性の感想が聞きたくなったし、いろんな人の意見が聞きたくなる映画でした。だってこんなに良い作品が多くの人に届かないのは勿体無さ過ぎるから。
ちょうど今、命を軽視する社会的風潮がはびこっています。メディアに踊らされ死んでよい命があるなんて平然と言う人が増えている。そこに対して、真っ向から命の尊さと愛しさを伝える、とってもタイムリーな作品。私は感動しました。