退会済のユーザー さんの感想・評価
4.6
物語 : 4.5
作画 : 4.5
声優 : 5.0
音楽 : 4.0
キャラ : 5.0
状態:観終わった
そういう見方があるのか
最初はハーレム系かなと思ったらそうでも無かったですね。主人公と周りの人物が不思議な現象に巻き込まれていく話ですが、現象についての解釈が面白くて最後まで視聴しました。※ここから先はネタバレです。
{netabare}
≪素粒子物理学の考えを持ち込んだアニメ≫
「思春期症候群」という名前が付いた都市伝説が登場しますが、これは単なる中二病設定では無いようです。
主人公「咲太」の部屋には、なぜか物理関連の参考書があり、思春期症候群を発症した人物が抱える悩みを相談する相手「双葉」は何かと、物理学における思考実験や理論の話を持ち込んできたことで気づきました。
これ、SF・インテリ要素も多いなと・・・。
作中では「観測理論」「シュレディンガーの猫」「ラプラスの悪魔」「量子もつれ」「量子テレポーテーション」等、過去に実際に議論された物理現象が説明されてますね。
物理学に興味の無い方には単なる「中二病」にしか思えないかもしれません。しかし、物理学をかじったことがある方には、「粒子レベルでの物理現象が人間レベルで起こるとこうなるんだ」と感じるでしょう。
実際の素粒子物理学では、粒子の存在というものは非常に曖昧なもので、その「存在が曖昧」である粒子から作られた人間は、「観測されていないだけ」で実はとても不安定な存在なのかもしれない。
という、素粒子物理学での「思考実験・物理現象」を実際の人間社会に落とし込んでみたシミュレーションだと捉えれば興味深い物語設定でした。
よく似た怪奇現象が絡んだアニメ作品では、「化物語」「ココロコネクト」等がありますが、この作品で起こる現象は「素粒子レベルの世界において」は限りなく「現実」に近いですね。
「量子もつれ」「量子テレポーテーション」に関しては、「電子を用いた実験」が行われ、一般常識では説明がつかない現象「エンタングルメント」が実際に起こっているようです。
{/netabare}
≪感想≫
{netabare}
1話目あたりでは、まだ中二病設定の話としか見ていなかったので「よくあるハーレム恋愛もの」と捉えていました。主人公も辛い過去を経験した人物で冷めた性格に感じていました。
しかし、桜島麻衣に起こった「思春期症候群」を機に、大切な人を守りたいという感情が出てきて良かったと思います。告白シーンを見たときは確かに「鉄のハート」だと納得w
その後の「思春期症候群」の話についても、物理現象についての知識を入れて見ていると「そういう見方があるのか。」と思わず見入ってしまいました。
最後の「かえで」の話では、本来の「花楓」に戻り、主人公はパニックを起こしますが、「まぁそうなるわなぁ」と頷いてしまいました。
咲太にとってはどちらの「かえで」も「かけがえのない妹」であることには変わりありません。「かえでには時間がないんです」と、記憶喪失の「かえで」からの最後のメッセージを聞いていたんだから尚更だなと実感。
記憶傷害が設定になったドラマ作品などは良くありますが、記憶を失った瞬間もショックですが、
記憶を失っている間に起こった「楽しいこと、悲しいこと」もそれはそれで家族には「かけがえの無いもの」であることには違いありません。
同時に「記憶を失っていた間の人格」も家族にとっては、その人格も本人そのものであることに変わりありません。
「かえで」の記憶が戻ったとしても、それまで麻衣さんやのどかと暮らした記憶が根こそぎ無くなったショックは大きいだろうなと感じました。
単なるハーレム・恋愛モノでは無く
「思春期に心が不安定な状態になる → 素粒子の不安定さと同様に人物の存在そのものも不安定になる」
という独特の世界観を持った「良作」でした。素粒子物理学をかじっていれば
人間レベルの大きさでの実験では観測・証明はされていないが、万物を構成する「素粒子レベルの超ミクロの世界」では確かに不可解な現象が実験で確認されていて、その不安定な素粒子から作られた人間でも「素粒子と同じような現象が絶対に起こらない」ということは理論的に証明はできていません。
このような視点でこの作品を見てみると、一見無茶苦茶な展開に見えても、実際に行われた実験や理論が元になった現象と捉えると、納得が出来る面が多かったです。
劇場版も見ましたが凄く楽しめた作品でした。SFや素粒子物理学に興味がある方にはぜひオススメしたいです。
{/netabare}