washin さんの感想・評価
3.9
物語 : 3.5
作画 : 4.5
声優 : 4.0
音楽 : 4.0
キャラ : 3.5
状態:観終わった
欲望、たとえ醜くとも
いままでの幾原監督作品では、献身、すなわち愛が一番のテーマに描かれていました。少女革命ウテナ、輪るピングドラム、ユリ熊嵐。美少女戦士セーラームーンRもそうだと思います。最終回において、それぞれの登場人物たちは記憶から、つながりからいなくなりながらも、他者のためを想い、世界をほんの少し変化させてきました。それらの行為はとても美しいものでありました。
しかし今回の作品では、世界から消えることはありませんでした。むしろつながりを持ち続けようともがく最終回でした。なぜこのような結末を迎えたのでしょうか。
いままでの作品では、欲望と愛は対極のもの、として考えられていたと思います。特にユリ熊嵐においては顕著に表れていた思います(百合城銀子と百合園蜜子との階段のシーン等)。愛とは献身の心。欲望とは自らの存在、命。それゆえに欲望ではなく愛を選ぶと世界から消えることとなりました。
今作では最終的につながり(欲望)を最後まで手放しませんでした。それぞれが持つ欲望を求め続けたのです。ということは、愛を手放したのでしょうか。私は違うと思います。確かに欲望は自分のエゴです。もしかすると世間的に、あるいは常識的に醜いものかもしれません。しかし、それでも欲望は命です。手放せばつながりは消えてしまいます。たとえ自分のためであっても欲望を持ちつづけてもいいのではないでしょうか
人間はつながっている生き物であり、つながりたい生き物です。それゆえに人を傷つけてしまいます。人に傷つけられることもあります。しかしそれでもなお欲望を持ち続けているからこそ私たちはつながれるのです。生きていけるのです。
欲望を持つこと。そしてそれに起因する、良いこと悪いこと。そのすべてを受け入れ生きていく覚悟を持つこと。私たちはそれを愛だと信じていいのではないでしょうか
最後に幾原監督作品は、テーマ(愛)は不変でも、その考えやアプローチはちょっとずつ違います。いままでの作品を観たことがないという人はぜひ観てほしいです。