森可成 さんの感想・評価
4.9
物語 : 5.0
作画 : 5.0
声優 : 5.0
音楽 : 5.0
キャラ : 4.5
状態:観終わった
青臭い事の何が悪いというのか!
「宇宙よりも遠い場所」は、
近年稀に見る青臭い作品なのであります。
青臭さの極北と言っても過言ではありません。
話は変わりますが
北方謙三氏という作家がおられます。
その作風は、ひたすらマッチョ。
むせ返る程の、男臭さに満ち溢れて
いるのであります。
その北方謙三氏は
かつて、とある青年向け雑誌において
相談に答える形式のコラムを
担当しておられました。
恋愛、人間関係、社会への不安、等
様々な悩みを持つ青年からの相談に
対応しておられたのであります。
そこにおいて氏は大変有名な回答を
よくなさっておりました。
「そんなことで悩む暇があったら
ソープに行け」
であります。
一刀両断とはこの事か、
と膝を叩きたくなる程の回答です。
青臭い事を言ってないで大人の
階段早く登れ、というお考えを
持っておられるのであります。
北方謙三氏にとって
青臭い事は唾棄すべき対象なのです。
翻って「宇宙よりも遠い場所」であります。
主役は4人なのですが、
実質的には報瀬ということになりましょう。
南極に行くために必死にお金を貯めて、
その為ならば周りを省みません。
南極関連にステータスを全振り
しているため、世間の事柄に疎く、
作中でもレッテルを物理的にも
貼られた通りポンコツなのであります。
しかしながら、その凄まじい情熱は
キマリ、日向、結月の3人に影響を
与えるに十分なものでした。
母親の行った南極に行きたい、
報瀬は、ポンコツ振りを露呈しながらも、
その願いを叶えるべく邁進するのであります。
3人も報瀬に触発され、
様々な思いを胸に
南極を目指すのでありますが、
他者から見れば、
「えっそんな理由で行っちゃうの?」
と思うことでしょう。
詰まる所、彼女達は青臭い事を
自覚もなく実行してしまう人達なのであります。
願いだったり、夢だったり、憧れだったり
そんな理由で南極を目指すのであります。
この愚直さに人は心を打たれるのであります。
利益でも仕事でも名誉でもなく、
その思いだけで足を踏み出す勇気に人は
感動するのであります。
辛くとも悲しくとも
前を向くことを諦めない
ケレン味の無さに人は
胸を熱くするのであります。
仲間の気持ちに寄り添い、
共に笑い共に泣く
ひたむきな友情に人は感情を
揺さぶられるのであります。
この青臭さに涙腺が耐えられる訳がありません。
とりあえず劇中歌が流れてきたらティッシュを
用意して頂きたいのであります。
特に終盤には嗚咽を漏らしてしまう程のシーンが
我々を待ち受けているのであります。
制作陣は本当に大人なのでしょうか。
こんなに青臭い作品を制作出来た事に
只々賞賛を贈るばかりであります。
これ程コメディ部分を含んでいながら
エモーショナルにまとめ上げた作品
は滅多にないと思います。
大傑作なのであります。
北方謙三氏はこの「宇宙よりも遠い場所」
を観て、どんな感想を抱くのでしょうか。
ちょっと聞いてみたい気もいたします。
最後に「宇宙よりも遠い場所」の好きな
セリフ、ベスト3お伝えしたいと思います。
3位
「選んだんだよ!自分で!」(8話)
2位
「よくない!ここまで来たんだよ!
ここまで来たんだもん!」(12話)
1位
「それが人を傷つけた代償だよ!
私の友達を傷つけた代償だよ!」(11話)
キマリと報瀬の名言率が
高すぎるのであります。