「海獣の子供(アニメ映画)」

総合得点
71.2
感想・評価
129
棚に入れた
537
ランキング
1403
★★★★☆ 3.7 (129)
物語
3.5
作画
4.3
声優
3.5
音楽
4.0
キャラ
3.5

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ネタバレ

takarock さんの感想・評価

★★★★☆ 3.7
物語 : 2.5 作画 : 5.0 声優 : 3.5 音楽 : 4.5 キャラ : 3.0 状態:観終わった

劇場じゃなければ10%くらいしか伝わらない(劇場体験と物語評と映像評と)。

都内のTOHOシネマズのレイトショーで観てきましたが、
席は9割くらい埋まっていました。
客層は比較的若い人が多く、女性がかなり多いって印象ですかね。
音楽面だけで言っても、久石譲に米津玄師ですからねw
これだけでも客呼べるでしょうw

私は上映後の空気感というのが非常に好きですw
客のテンションをダイレクトに感じることができるからです。

さて、本作の場合はどうだったのかというと、
戸惑いとか、ため息とか、そんな感じでしたw
さらに聞き耳を立てていると、
久石譲が~、米津玄師が~、芦田愛菜の演技が~とか、
話題のほとんどがスタッフ・キャスト関連。
さらに、カップルで観に来ていた女性が、(どこか相手を気遣いながら)
「なんか、よく分からなかったけど、思っていた以上に壮大な話だったね」
なんて言ったかと思えば、
友人同士で観に来ていたであろう女性が、
「原作を映画にするとここまでコケるか~」なんて暴言を発していましたw

この体験だけでも劇場に足を運んだかいがあったってものですw
お前ら面白すぎるだろ!!w
私の聞いていた限りだと「おもしろかった」と発した人は一人も
いませんでした いませんでした いませんでした

上映後の空気がこのようなものになるであろうというのは、すべて想定内です。
何故かと言えば、実際に観に行った知り合いや、
あにこれ仲間たちに事前にリサーチしていたからです。

{netabare}「劣化版エヴァ」
「(原作の話をすれば)畳み切れていない」
「映像は今年一だけど、劇場でなく家で見ても、『意味がよく分からない』で終わりそう」{/netabare}

ここまで言われれば、もうお察し!でしょ。
だから、私は絵画鑑賞のつもりで行くと決めていました。
故に、ある意味館内で本作を一番楽しめたのは私だったのかもしれませんねw

ただ、館内の戸惑いだったり、ため息というのは当然の反応なのかもしれません。
何故ならば、本作は映画としてはあまり評価できるものとは思っていません。

さて、今回は物語評、映像評、2つに分けて語ります。


「物語評(ネタバレあり)」


{netabare}映画のストーリーにおける原始的なフォーマットというのは、
未成熟な主人公→映画的な体験→その体験を経て成長した主人公
というものです。
ハンドボール部でチームメイトに怪我を負わせてしまう琉花。
「先にやられたからやり返しただけ・・私は悪くない・・・」
実に未成熟です!w
琉花は母親ともギクシャクしています。
この未成熟な少女が、如何なる体験を経て、最後に成長した姿を見せるのか?
そういう意味で言うと、映画のフォーマットに忠実な作りと言えるでしょう。

それでは、話のコアとなる映画的な体験というのは何かと言えば、
海獣ジュゴンに育てられた「海」と「空」という二人の少年との出会い。
そして、海で起こる「生誕祭」です。

そしてその生誕祭は物語ではなく映像で語られます。
(映像を楽しんでいる中で)若干ノイズとなる解説もしてくれています。

以前にタモさんが生命の誕生かなんかのビデオを見たらしく、
如何に新たな生命が誕生するのが奇跡的なことなのか
番組で熱弁していたことがあったのですが、
本作における主張というのはそれに近いのかもしれませんね。

この世界は未知で溢れています。
我々観測者は世界のほとんどを認識していません。
たとえば、宇宙におけるダークマター(暗黒物質)なんかがそうです。
宇宙の物質の大半を、我々は観測することができないのです。

海のある星は子宮。隕石は精子。
海と宇宙は似ている。そして星の誕生は、まるで生命の誕生のようだ。
このような奇跡を前にして言語は無意味。
言語を介さない対話。これもまた奇跡。

これらを劇中で散々「言葉」で解説してくれるので、
何を言わんとしているのかは分かります。
SFでよく使われる題材なので、馴染みもありますからね。

しかし、このような既視感すら覚える主題を訴えられても
「それで?」と言いたくなりますし、
このような奇跡体験を経た琉花は成長したのでしょうけど、
その体験があまりに奇跡的過ぎで強引なんですよね。
これだと、映画的な体験前のする前の未成熟な主人公が
どのような問題を抱えていようとも、否が応でも成長してしまいます。 
つまり、何が言いたいのかというと、
「あんな体験をしたら成長するのは当然だよね」ってくらい
話作りが乱暴。

「考えるより感じろ」というのは別に構いませんけど、
これまで散々取り扱われてきた主題を、映像任せで訴えられても
話としてはあまり評価できません。話作りをぞんざいにし過ぎでしょう。
ディズニー映画なんかは、圧倒的な映像美と話作りは共存している訳ですから、
分かる人には分かるというのは、言い訳の理由にはならんでしょう。{/netabare}


「映像評」


物語評でかなり辛辣な評価をしましたが、
端っからそこの部分は期待していませんでした。
冒頭でも述べたように、私は絵画鑑賞のつもりで劇場に足を運んだのです。
伏線は?メタファーは?主題は?
極論、そんなものどうでもいいのです。圧倒的な映像体験、これが目的です。
海の描写がとか言う前に、そもそも日常描写の書き込みが半端ないです。
線の密度が半端ない。 制作期間が5年とか、6年とか。さもありなんです。
正直映像に関しては、言葉にするのが難しいですね。
四次元の水族館とプラネタリウムを合わせたようなアトラクションですかね。
閃光が走る海原を泳いでいるんですよ。
「やばっ!息継ぎしなきゃ」って感じるくらいの波がスクリーンから迫ってきました。
なんだか第六感まで刺激されるような圧倒的な映像でした。
観賞でなくて、体験ですね、もうここまでくると。

そして、私はこの体験を是非劇場でしてもらいたいと思います。
家で見ても、10%くらいしか伝わらないでしょうから。

賛否両論だし、行くか迷ってるというそこのあなた!
映像だけ見に行くと割り切っても絶対に損はしませんよ!
むしろ、そっちの方が楽しめるまである。

投稿 : 2019/06/21
閲覧 : 892
サンキュー:

33

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