tag さんの感想・評価
3.0
物語 : 3.0
作画 : 3.0
声優 : 3.0
音楽 : 3.0
キャラ : 3.0
状態:観終わった
美馬と無名
美馬のせいで台無し、が大方の感想だと思うのだが、今回は美馬と無名の関係性について述べたい。
美馬は無名を利用し尽くしているだけのように見える。理想主義的な無名の傾向を敢えて尊重し、自らが高尚な使命に命を捧げていると誤解させ、嘘がばれたら薬物で自意識を奪って操る。
美馬の目的もただの破壊衝動に見える。結局、美馬は何をしたかったのか。なぜ、父を殺すと同時に金剛郭の破壊を試みるのか。
だが、きっと美馬が憎んでいたのは「駅」というシステムに閉じこもり、積極的な反攻に転じようとしない天鳥幕府の体制そのものだったのだろう。駅は次々に廃駅になる。このままではじり貧でいつかはすべての駅が廃駅になる。日ノ本には未来がない。
美馬が憎んでいたのはそんな無責任な幕府とそれになんの疑問も抱かず従っている民衆そのものだったろう。
無名の能力にみるまでもなく、カバネリを量産すればカバネへの反攻が可能なのは明らかだ。だが、天鳥幕府はたったそれだけのことをさえ試みない。民衆も危険を身に晒して反攻を企てない。そのすべてが美馬には腐っているようにみえたのだろう。
だから、美馬は無名を利用していたというより、いつか美馬の理想を無名が理解してくれると信じていたと思う。その可能性はあったと思う。実際、滅火は明らかにすべてを理解したうえで美馬に協力していたのだから。
だが、無名はそうなる前に生駒に会ってしまった。同じようにカバネのいない世界を望みながら、人の命を犠牲にせずにそれを目指す生駒に。無名の様な無垢で純粋な少女にとって、生駒の理想の方が、現実主義的な美馬の理想より輝いて見えたのは仕方ない。
美馬の理想が分かりやすく視聴者に伝えられなかったのは、失敗ともいえる。だが、ちゃんとそれを伝えられていれば、美馬はけっしてわけのわからない悪役などではなく、生駒のネガ、アンチヒーローとして、主人公の宿敵、となりえたはずなのだ。そこはヒロインである無名をたった12歳に設定してしまったという問題もあるだろう。無名には美馬と生駒の理想の間で葛藤する役回りは難しい。
美馬と無名の関係性こそ本当は本作品の軸だったと思う。そこを描き切れなかったのはつくづく残念だ。