「海獣の子供(アニメ映画)」

総合得点
71.2
感想・評価
129
棚に入れた
537
ランキング
1401
★★★★☆ 3.7 (129)
物語
3.5
作画
4.3
声優
3.5
音楽
4.0
キャラ
3.5

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退会済のユーザー さんの感想・評価

★★★★★ 4.9
物語 : 5.0 作画 : 5.0 声優 : 4.5 音楽 : 5.0 キャラ : 5.0 状態:観終わった

わたしの中の海

わたしたちの心を わたしたちは知りません
心の90%は 意識の光に照らされることはなく
ただ心の奥底でおおきな流れを作り出し
わたしたちの 気持ちを 心を 世界を 動かしています

この映画は その 深く 暗く 優しく 残酷な
わたしたち自身が持つ宇宙への旅の体験です
細密な絵や 胸の奥に届く音響が
記憶の中の海を 夏を鮮やかに再現し導いてくれます


この惑星は今から約46億年前に生まれ
それからほどなくして そこに海が生まれました
海にはさまざまな生命の材料が満ちていて
生きものはみな そこから生まれて来ました

やがて わたしたちはその海を離れ 陸に上がりました
けれど 生命は決して海を離れることはできず
だから わたしたちの身体は海の水で満たされていて
からだの奥底には わたしたちの母がいるのです

海から遠く離れ 生まれ来たことを忘れてしまっても
その中では息もできなくなってしまっても
わたしたちは体の奥深くで海とつながり
呼び声をいつも聴いています


おおきな生命を断ち切るように海を離れ
わたしたちは高く空を求めて生きていくけれど
海はわたしたちの夢に現れ 闇の底を眩い光で照らし
歌を唄い 導き 見えないものを見せてくれます

それはうちひしがれた孤独のときかもしれない
暑さに汗がしたたり落ちるときかもしれない
人知れず傷ついた痛みに泣く時かもしれない
この体から解き放たれてしまいたい時かもしれない

海は
わたしたちの知らないわたしたち自身は
この世界がどれほど美しいか
この一瞬がどれほどかけがえないものか
わたしたちに見せ 教えてくれます

一瞬の啓示のような出会いかもしれないけれど
その一瞬を惜しみ泣くかもしれないけれど
いのちのあるがままの姿を見せてくれるために
海はきっとまた わたしたち会いに来てくれます


もし劇場で観られるならば ぜひ観に行ってください
わたしは海に呼ばれ 次の日にもう一度観ました
できれば 前の方の席で観ることをお勧めします
これは”観る”のではなく ”体験する”映画だからです


公式Webサイトに
松本大洋さんが素晴らしいコメントを残しています

 この映画を観たひとの数だけ
 新しい宇宙がうまれる。

どうかあなたの心にも
ひとつの宇宙がうまれますように



2019年11月24日の追記:

今日NHKの「日曜美術館」で
秋野亥左牟(あきのいさむ)さんという絵本作家のことを
はじめて知りました。

世界中を旅し、やがて沖縄の小島に定住してからも
はるか昔から伝わる神話のような
生命をそのまま描いたような絵で
絵本を描き続けられた方でした。

原作者の五十嵐大介さんが秋野さんをお好きかどうか
は知りません。
でも、絵の印象やモチーフの使い方が
原作漫画が似ていることもありますが
それ以上になにかもっと深いところで
この映画に繋がるものがあるように思えて
”あぁ、この映画のルーツはこんなところにもあるんだな”
とそう思いました。


海と宇宙、神と人の生活が地続きでつながり
魚や動物と 人間との境がない表現

旅して彷徨うことと 好きな土地に根を下ろして暮らすこと
魚の美しさに見惚れることと それを獲って食べることが
同じひとりの生命の営みとして自然に同居する
ご本人の生き方

絵だけで仏教の教えを表してしまう曼荼羅の壁画を見て
「絵を描こう」と思われたという秋野さんの言葉を聞いて
やはりこの映画の力も、ストーリー云々にあるのではなく
絵や音=”アニメーション”の力にこそあって
ただそれを感じ、体験する映画だったんだな…
と改めて思い出し 考えた次第です。

投稿 : 2019/11/24
閲覧 : 269

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