washin さんの感想・評価
4.9
物語 : 4.5
作画 : 5.0
声優 : 5.0
音楽 : 5.0
キャラ : 5.0
状態:観終わった
アニメ映画の一つの到達点
やっぱり日本のアニメはいいなあ、と心の底から思えた作品でした。
登場人物としてではなく背景として映画の世界に入り込んでいる感覚。まるで(言い方は悪いですけど)のぞきをしているような感覚を持つことでしょう。
映画館で観ましたが、自分の息遣いにさえ気を使うほどの緊張感。これほど自分の存在が邪魔になった作品は他にないのではないでしょうか。
(ちなにに個人的に、他のうるさい客に殺意がわく作品ランキング一位にもなっております笑)
すべてのシーンで二人の現在の関係性とそこから変化した関係性、登場人物の心の動きを感じることができます。このあたりはさすがの京都アニメーションといったところでしょうか。細かい作画から逃げずによく作ってあります。脱帽です。
何気ない言葉が誰かを傷つける瞬間、嫉妬を隠し切れないセリフ、顔には出さないけど動作に表れてしまう感情、自分の思い通りにならないことへの悔しさや失望。それらを映し出す一つ一つのシーンに心動かされることでしょう。ぜひ細かいところまで注目してみてください。
「画」ももちろん素晴らしいものでしたが、今作のキーは「音」だと思っています。小説では、感情や想いは地の文で表現できます。しかし映画ではそれができません。なので音、音楽がその代わりになることが多いです。しかしこの作品は、音楽をむやみに使わずに感情を表現しています。音楽というより環境音といったところでしょうか。これはとてもすごいことだと思いませんか。なぜなら音楽以外(声や画、時間の使い方など現実世界にあるものと同じものだけ)で心理描写しなければならないからです。セリフだけで進行する小説のようなものです。これは京都アニメーションでしかなしえないことでしょう。このようにむやみに音楽に頼らないことで、少ない音楽を聴かせるシーンでより感情が響いています。
個人的には今作の演奏シーンが今まで一番好きです。ユーフォシリーズといえば吹奏楽を扱っていることもあり演奏シーンが大きな見せ場となっています。いままでの演奏もよかったのですが、正直今作品で描かれている演奏シーンが今までの演奏シーンで一番好きです。なぜなら今作の演奏は結果ではなく過程だから。いままでは結果でした、いろいろありましたけど最終的にこうなりました、みたいな。そこの在ったのは達成感です。しかし今回は違います演奏シーンの中でも感情や関係性は変化しています。嫉妬や失望、希望と絶望。自分の想いを、感情を表現している、隠しきれていない今作の演奏とても感動しました。
ユーフォシリーズの1作品ではありますが、未見の人でも大丈夫なように作ってあります。より多くの人がこの作品を観てくれることを願っています。