101匹足利尊氏 さんの感想・評価
4.0
物語 : 3.5
作画 : 5.0
声優 : 3.5
音楽 : 4.5
キャラ : 3.5
状態:観終わった
波打ち際は雄弁に語る
原作コミックは未読。
人類は未だ宇宙の十分の一程度しか観測できていないと言う。
光の可視域にせよ、音の可聴域にせよ、
普段、人間が感知できる世界の領域はあまりに狭い。
加えて言語を獲得したことによる思い上がり。
言葉以外は意味を成さないと言う強固な思い込みにより視野はさらに狭窄。
イルカやクジラと言った海の獣たちは、
超高音域の“歌”で高度なコミュニケーションを交している。
その他、生き物の発する鳴き声や音。
さらには発光生物の蛍光や燐光。
もしかしたら波や風の音にさえも、人間が解釈し得ない、
伝達や記憶が蓄積されているのかもしれない。
音と光が押し寄せる夕暮れの波打ち際などは、
まさに情報ハイウェイなのだ。
以上のような思索にドップリと浸りたい方にとっては、
本作は打って付けの逸品だと思います♪
{netabare}少女がひと夏の超絶ファンタジー体験を経て、ほんの一歩だけ成長する。
強欲な人類が大海原と大自然の真理の前に翻弄される。{/netabare}
などなどジュブナイル作品や海洋アドベンチャーの王道を一応踏襲はしますが、
エンタメ性は必要最低限。
宇宙の真理に導かれ、ざわめく風や海。
目的地へ殺到する生物たちの大群。
これらを描き切った作画と、
久石譲氏の劇伴により構築された圧巻の映像美を鑑賞する。
本作はアート性の高い作品なのだと思います。
言語と言えば、分類は進歩との指針の元、
言葉には、大地と海、自分と他人などと、
あらゆる事象を強烈に分け隔てる性質があります。
本作には、言語がもたらした境界をも取り払うパワーがあります。
文字に頼らず、自然界の意思と交信し、一体とならんと奏でられた、
アイヌ民族の伝統楽器・ムックリがビヨヨ~~ン♪と鳴り響き、
それらの音色をも久石譲氏のBGMが取り込んだ時、
鑑賞者は少女も海も宇宙(そら)も一体となる祝祭を目撃する。
何も言葉を捨てろとまでは言いませんが……。
(本作は言葉も含めたコミュニケーション不足の解消も促す筋書き。
そこまで人類を見放してはいませんw)
鑑賞時は、しばし言葉を忘れて、映像世界に身を委ねたい芸術作品です♪