lll1 さんの感想・評価
4.5
物語 : 4.5
作画 : 5.0
声優 : 5.0
音楽 : 4.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
全てが高水準で高品質
長いです。すみません。大好きですこの作品。
まず、観はじめて一番感じたことは "スタジオジブリのアニメの影響を物凄く受けている" でした。
京子ちゃんは、『となりのトトロ』のメイちゃんだし、古い空間は『千と千尋の神隠し』を彷彿とさせるし、恋愛要素は『耳をすませば』のようにも感じられた。
後で調べて分かったことですけど、磯光雄監督は高畑勲の『おもひでぽろぽろ』や宮崎駿の『紅の豚』などのジブリ作品に関わってたみたいですね。
その他にも押井守の『GHOST IN THE SHELL』や大友克弘の『MEMORIES』、今敏の『パーフェクトブルー』、渡辺信一郎の『カウボーイビバップ』など、一流の監督たちの下で、デザインや原画の仕事をこなしていた。
世界で高く評価されている、日本の一流アニメの影響を受けているので、今作『電脳コイル』はアニメーション、演出共にとても質が高い。
褒めたいところはたくさんあるんですけど、3つほどにとどめて書きます。
一つ目は、生活をしっかりと描いたこと。
映像作品において、出来事(ストーリー)以外の普段の部分、生活を描くことはとても重要であると考えている。登場人物がどんな性格か、どんな生活をしているのかといった部分から、視聴者は親近感を抱いたりする。
そして何より生活を描くことによって、キャラクターのみならず、作品全体としてのリアルさが増すし、現実味がぐんと出る。
『千と千尋の神隠し』で千尋が「これからここで寝泊まりするのか」っていう感じのシーンがある。あのシーンはこれまで、非現実的なことばかりしか描かれていない中で、急に現実的なシーンになる。ファンタジーが苦手でも大抵の視聴者なら、あのシーンの千尋の不安さであったり、ここで生活して行くことの大変さが分かると思う。布団で既に眠りについている、他の従業員が眠りにつくシーンも生々しく描写されている。
『電脳コイル』もそういったシーンをしっかり描いている。ヤサコが風呂場にいて、お父さんが帰ってきて、そのまま風呂に入るシーンなど。
こういったシーンを入れてくれると、作品との距離が縮まり、近い距離での視聴が出来る。
二つ目はアニメーションです。
こんなにもキャラクターが活き活きとしているアニメーションは、なかなか見れない。他のアニメのときに見る"よく動くなぁ"とかじゃなくて、活きてるんですよ。
京子ちゃんが台所に走って向かうシーンとかは感動した。このアニメは全編通して、走っているシーンに熱いこだわりがある。動いているシーンといえば、大抵走ってる。
いま思うと、ジブリも走っているシーンは多いような。千尋が壁にある配管の上を走るシーンはとても印象的だった。
三つ目はキャラクター、及びキャスティングと演技指導です。
上記に書いた、アニメーションと生活の部分によって、キャラクターたちにどんどん愛着が湧いていく訳です。勿論脚本が良いからですが。
メインキャラクターは勿論のこと、電脳ペットたちがこの作品を大きく支えている。私には、デンスケやオヤジ、モジョたちが可愛くて仕方が無かった。
主要人物で言うと、京子が一番役目を果たしていた。京子という年下のキャラクターを出すことによって、他のキャラクターは大人にならざるを得なかったりと、違った一面を見せる。視聴者はそういったギャップによって、またキャラクターを好きになる。イサコがまさにそうでしょう。
キャステイングと演技指導は完璧でした。マイコ先生とか完成されていた。声優を褒めるんだったら、矢島晶子が断トツです。演技が上手いのは分かってたけど、ここまでとは。本当に高いレベルにまで、キャラクターを引きだしてる。
ストーリー、脚本、音楽、設定など、他の要素はあまり触れてませんが、どれも本当に高水準で素晴らしいものでした。…色々書きたいですが、これ以上は長くしたくないので。
個人的には後半、ストーリーが先行してしまい、他の要素がおざなりになってしまったかなといった印象を受けましたが、こんなにも素晴らしい作品を見れたことが嬉しくてたまらないので、
最終評価は 9/10点です。
監督の磯光雄は、とてもこだわりが強い方のようです。デンスケの尻尾の振り方にもこだわっていたとか。他は何を監督されているんだろうと思ったら、何もしていなかった。
他のスタッフが一緒に仕事がし辛いのかな、というような考えを抱いてしまいますが、是非また何か監督してもらいたいです。と、思っていたら一本何かやるみたい。『地球外少年少女』、楽しみです。