「けいおん!(TVアニメ動画)」

総合得点
90.3
感想・評価
9683
棚に入れた
36957
ランキング
57
★★★★★ 4.2 (9683)
物語
3.9
作画
4.1
声優
4.2
音楽
4.4
キャラ
4.3

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ネタバレ

ぺー さんの感想・評価

★★★★☆ 3.8
物語 : 3.5 作画 : 3.5 声優 : 3.5 音楽 : 4.5 キャラ : 4.0 状態:観終わった

ふわふわとした時間

10周年だそうです


リアルタイムでは観るべくもなく、流行時になんとなく耳に入っていたかどうかというところ。
実は一度断念してます。6話か7話まで視聴し、毎度繰り広げられる放課後のお茶会に飽きがきてしまったのが途中断念の理由でした。
私のアニメの師匠である新卒くんからは「ただ日常を繰り返すのが良い」と推薦を受けつつも、その感覚が理解できなかったのです。

とはいえ一つの時代を飾り日常系といわれる作品の中で間違いなく金字塔。アニメ好きを名乗る上で登竜門のような位置づけかと思い、メモリアルイヤーの再放送にパクッと食いついてみました。
今回は完走すると決めての完走です。基本的に「日常系」は自分と相性が悪いという前提で以下感想。


廃部の危機にあった軽音部に主人公ら新入生4人が集まったところからスタートし、彼女らが進級した後に新1年生を加えてーの計5人がコアメンバー。そしてほぼこの5人と拠点である音楽室の中だけで話が回っていく全14話(本編12話+オマケ1話+円盤特典1話)です。

あらためて見ますと、意外と(失礼!)よく練られております。
息が合わなきゃグダグダになるリズム隊(ベースとドラム)を幼馴染同志にしてバンドの背骨を固める理由付けにしたのかな~とか、妹を年子にして同じ高校内に収めて中学だ高校だと分散しないようにしたのかな~とか、物語設定でそこそこ説得力を持つよう設計されてたように感じました。単純なゆるふわ日常はオチもドラマもないため、こういった説得力の高さで差別化を図ったことは本作の強みと感じました。

また、オチもドラマもそして高校生であれば期待したい主人公の成長すら削ぎ落したものがウリ(と私が勝手に思っている)の日常系において、展開を邪魔しない程度に変化をつけてきているなと感じられる箇所も複数ありました。二つほど例を挙げますと、


■“ふわふわ時間”という曲
主人公らが奏でる曲はどれもふわふわぽわんぽわんした歌詞が特徴で、ご多分にもれずこちら“ふわふわタイム”も同系統に分類される曲。劇中曲です。
{netabare}1年生と2年生の文化祭(学園祭)でのステージ演奏曲でした。1年次のはリードボーカル唯の声がつぶれてしまったため代役に澪を立てた件です。この時バックコーラスを唯のつぶれ声で音入れをしてます。一聴してつぶれ声とわかるのがミソで、これが律と紬ではないからこそ意味ある演出でした。
・バックコーラスとはいえ、歌唱描写のこれまでなかった二人だと少し違和感があるかもしれない
・これまでの流れ(唯が声をつぶした)を捨ててない
流すのなら、澪のドジっ子エピソードだけをお披露目して「はい、次~」で終わってよいパートなのですが、ここでの「あ~唯ちゃんやっちゃったね~」感も出したことで、二年次の文化祭がちょっぴり感動するものに仕上がってたのでした。

「悔しくて死にそう」とわかりやすいドラマでもあれば二年次の同曲の演奏も違う印象になるのですが、本作のお作法としてそれは御法度です。ふわふわとは違う別のアニメになっちゃいます。{/netabare}


■平沢唯に成長は必要か?
けっこう気づきがあるもので、完走してから初回を観直すことはよくあります。
{netabare}初回。寝坊して入学式に遅刻しそうになり慌てて駆け出すというよくある導入。時は流れ、家に忘れた愛用のギターを急いで取りに戻ってという最終回。全編を通して走ってるシーンが少ない本作の中では印象的な一コマです。
注目したいのは家の中。リビング奥から玄関を望む構図のカット割りは一緒です。二階から駆け下りてきた唯が勢いあまってコケる第1話は王道中の王道展開。同じようにギター抱えて二階から駆け下りてきた最終回での唯が今度は転びそうになっても踏みとどまって直角ターンします。
もちろん転んでギターを破損したら元も子もない事情などがあるにせよ、流されるまま慣性に従ってただけの入学時から少しだけほんの少しだけ成長したことを示唆するようなカットに思えました。{/netabare}


限られた空間と人が織りなす日常劇では“変わらないこと”が望まれているのだと思っていて、そこに物語性を求めることは無粋なことかもしれません。
そんな予定調和を崩さずに細かな変化だけつけてきているな、と感じられたのは収穫でした。
「ストレート」主体で時おり「ツーシーム」「カットボール」を挟む組み立ての投球術を目の当たりにしたかのようです。はた目には全部ストレートに見えますから。


断念して放置したままにせず良かった。いざ観終わって「ぜひ2期も観てみよう!」と思った次第。
次はもっと脱力しながらぼーっと鑑賞するつもりです。



そして放送から10年経ち、限られた空間の限られた人たちの日常劇は今でも一定の支持があるものの、時代に合わせた変化を遂げていると思います。
なかでもSNSの発達が意味することは大きく、{netabare}2018年冬期の『ゆるキャン△』では、同じ高校の5人組+センセと『けいおん』と同じような人数構成ながら、別々の場所からのメッセや画像のやり取りで空気の共有を試みてたりします。仲間同士の閉鎖空間というのは変わりません。{/netabare}これまで校舎の中で収まっていたものが、容易に物理空間が広がって、それでもなお同じものを共有できてるのが10年後の世界であり、私たちもそれが自然なことと受け止めることができています。


そんな10年後の今。色褪せない部分とは別に違和感を感じたとしても、古いからダメってことはないですね。
デバイスが変わろうが何しようが、依って立つ・立ち返る場所 “日常” を大切に思う心情って時代にあまり左右されないものだからです。



視聴時期:2019年4月~6月 再放送視聴 
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2019.06.09初稿
2019.07.13修正
2020.06.23修正

投稿 : 2020/06/23
閲覧 : 873
サンキュー:

90

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