退会済のユーザー さんの感想・評価
4.0
物語 : 4.5
作画 : 4.0
声優 : 4.0
音楽 : 3.0
キャラ : 4.5
状態:観終わった
深エロいい話
紳士向けアニメとしては異色作である。
一言でいうなら、文学的なのだ。
作中人物のおのおのが、自らの行動原理、つまりは信念に従って行動するところにストーリーの展開がある。これは物語の正統であり、文学的な発想に基づいている。
{netabare} 中盤以降の急展開は、主人公良介が、女の子を守りたいという自らの願望を実現する機会を得て、暴走的に突き進んでいくヒロイックな衝動から発生している。
その行動が招いてしまった災厄に絶望した結果、挫折した主人公は行動不能に陥る。これが物語の終盤をおおう暗い停滞感の要因となっている。
一見わかりにくいが、実はこの終盤の展開の中心にいるのがヒロインのリサラだ。
リサラというヒロインは実に魅力的だ。
リサラの行動原理はつねに、周囲の人々に対する強い責任感である。
彼女が単身人間界に乗り込んできた理由もそれであり、良介に対しては彼の死の危機を回避するという約束を果すことを最優先に行動する。
そして終盤、良介がもう一人のヒロインと結ばれることが彼の死を回避する条件となる時、リサラの内面の葛藤は決定的になる。
良介を助けるという責任を果すためには、彼に対する自分の想いを封じなければならない。苦悩に耐えてそれを実行するも、良介は結局リサラを選び、愛を告白し、死んでしまう。
このあたりの演出は秀逸で、このパートで展開されるリサラの心理劇こそが本作の最高の見せ場なのだが、ほとんど見落とされているようで残念だ。
クライマックスの決死のダイブもやはり、まずは彼に対する責任を貫こうとする行為だったはずだ。だが、最後の最後、ついに、彼女の封じていた想いが爆発する。この時のリサラのセリフは空前の破壊力だ。私個人的にはアニメ史に残るべきものである。{/netabare}
だから大方の誤解と低評価に対し、あえて主張したい。
こういう古風なヒロインの、古風な心の葛藤のドラマこそが、このアニメの本当の魅力なのだと。
さらに、単に「見せる」だけものであるエロと、登場人物の関係性の深まりの中に現れてくる「エロス」(哲学史的な本来の意味での)と、この二つがつねに並行して出てくるあたり、このアニメはある種のクリティカルな考察を内包した作品であるようにも思える。
結論。これはまさしく、「深エロいい」アニメである。
(追記。劇伴音楽だけはどうにも安っぽく、本作の質を落としてしまっている。)