聖剣 さんの感想・評価
3.7
物語 : 3.0
作画 : 5.0
声優 : 3.5
音楽 : 4.0
キャラ : 3.0
状態:観終わった
分母
『亡念のザムド』を視聴後に
その批評の多くに「エウレカが…」とあって
不当に評価の低いザムドに対し
元より知名度の高いエウレカへの嫉妬心(?)から見るに至る
■いったい誰の視点で見るのか?
{netabare}
おそらく主人公のレントン視点が基本となるだろうが
いかんせんオッサン視点では
年端もゆかぬ小僧に感情移入できるわけ無く
作中での親代わり(?)となるホランドの方に目が行く
で、
この男、ハッキリ言ってクズである
発言に一貫性がなく、気まぐれで気分屋
都合が悪くなると当たり散らす
自分は見ていて不快になるほどなのだが
一般的に『ホランド』は、視聴者からどう評価されているのだろうか?
普通、こんな大人が傍若無人な振る舞いをしてたら
周囲からの突き上げもあって然るべきだろうが、
そんな描写は少ない
ホランドという人間の立場や影響力・存在価値がそうさせるのかも知れないが
彼の背景が顕になるのは物語終盤まで待たなければならず
ソコに至るまではまるで感情移入できず、擁護する余地は一切ない
時すでに遅しといったところか
これってある意味
レントンの引き立て役として、少し都合良く使われている感じに映る
そう考えるとホランドって、とても悲しい存在だと思う
一方、このおかげで
チャールズ(とレイ)が際立って良く見えて
巷で言われる、第26話「モーニング・グローリー」が名エピソードである説に
彼らの存在も加味されて
妙に説得力も生まれてくるのだが、どうだろう?
{/netabare}
■ボーイ・ミーツ・ガール?
{netabare}
よく言われるカテゴライズではあるが
自分にはその意味がイマイチよく分かっていない
ともすれば
『僕』と『君』だけのセカイ系とどう違うのか
ありがちなラブコメなんかも…と疑義に尽きない
が、要は
ヒロインがカワイイかどうかが重要!なんだと思っている
その意味でエウレカは、
全くと言っていいほど魅力的に映らなかった
一方で、対照的な位置付けのアネモネの方が魅力的に感じた
何故だろうか?
髪の毛の色か?いや、ピンクも水色も大して変わらない
造形(デザイン)的にも似たようなものだし…
たぶん、ちょっと影のあるヒロインってのは妙に色気があるし
神秘的でミステリアスな女性は
世のDTにはかなりクリティカルなんだと思う
そして、それを拗らせて行き着く先はヤンデレ
そんなのがエヴァ以降の作品には顕著のような感じがしている
{/netabare}
■ガンダム、エヴァに続く系譜なのか?
{netabare}
アネモネのキャラクターが
エヴァの影響下にあることは間違いないだろうが
影響力はその程度に留まっていない
エヴァの秀逸さは多岐に渡るが
サブタイトルの映像表現や
ネルフ本部の画面インターフェイス等のグラフィック要素も実は大きい
その点でこのエウレカも負けちゃいない
印象こそ異なるが、各所で見られるグラフィックは
エディトリアルデザインとしても優秀だ
例えるなら、明朝体のエヴァに対しゴシック体のエウレカ
他にも
『セカンド・インパクト』→『サマー・オブ・ラブ』とか
ニルヴァーシュTypeゼロやジ・エンドなんかは
エヴァの初号機とか連想すると思うでしょう?
いやソコは∀とターンXなんです!
そう、ガンダムからの影響も大きい!!
例えば
『トラパー』→『ミノフスキー粒子』とか
アネモネなんかは強化人間そのものだし
最終盤の月光号の特攻シーンには、Zのスイカバーを想起させるし
とまぁ、日本のロボットアニメの
連綿と続く系譜を受け継いでいると胸を張って言える!
だが、ガンダム、エヴァと同等にレガシーとなるかどうかは
各個人の判断に委ねることにしよう
ついでに
ちょっと不格好なLFOもエヴァっぽくもあるが
でも直感的に、なんかマ◯ロス感あるなぁって思っていたら
案の定、河森正治氏が携わっている
実を言うと
河森氏のデザインは個人的にあまり好みじゃないんだよねw
{/netabare}
■テーマ不在か?
{netabare}
物語はボーイ・ミーツ・ガールの始まりに、
ポップでカジュアルなロードムービーかと思いきや
血生臭い戦闘を匂わせてみたら
文化、宗教、風土に、それらから起因する紛争
最後は人類存亡を賭けた戦い
あらゆるジャンルの詰め合わせ、幕の内感はあるものの
全50話という数をこなすには
コレくらいの引き出しが必要なのだと考えるべきだろう
仮に、これから見るとするなら
一気見するにはちょっと長過ぎるし
きっと途中で飽きてしまうだろう
できるなら
週末毎に多くて5~6話程度をまとめて見ることをオススメしたい
そうでないと
テーマ不在の雑多な印象しか残らず
きっとこの作品の良さを正しく感じられなくなってしまう
じゃ、この作品のテーマとはなんだろうか?
私には、「世界は広い」ってことを伝えたいのだと思っている
幼い主人公は、謎の少女に導かれ
この広い世界に触れて成長し大人になっていく、そんなお話だ。
やっぱり
俺にゃボーイ・ミーツ・ガールは理解できないんかなぁ?w
{/netabare}
■最後に
{netabare}
この作品の評価を分ける要因は
シリアスに成りきれないポップさ(軽さ)にあると思う。
グラフィカルなビジュアルに
OP、ED、挿入歌のチョイス、
各話のサブタイトルの元ネタに至るまで
ストーリーのシリアスさに対してカジュアルすぎるのだ
(決して悪いというわけではない)
それ故、独特な世界観を作り出しているとも言えるのだが
自分には、この作品で受ける印象は
より洗練された形で『亡念のザムド』として昇華していると感じている
そして、どちらかと言えばザムドの方を好意的に捉えている。
ただそれは、
たまたま先にザムドを見ていたってだけであって、優劣の差では無い
その差は、話数が多い分だけエウレカには「あそび」が多く
少し低年齢層向けに作られているということ
そんな(ザムドの)分母となる作品だ
ちなみに
レントン役の声優はザムドではナキアミ役を担当していて
なんかヒジョ~に感慨深いものがある
あと
キャリア初期の宮野真守の、
調子に乗っていない感じがウザくなくて実に好ましい{/netabare}